正道さんの関係者から情報を聞き、教え子の恭平さん(34)を訪ねる。今では立派な社会人となった彼だが、当時は札付きのワルで中学3年生の時に家出した時期がある。
友達の家を転々としていると「ある家で、ドアを開けたら正道先生がいて“見つけたー!”と掴まれて中学校に連れ戻された」という。「ここで待ってろ!」と一室に入れられて「まずい、まずい」と不安に駆られていると、先生がコンビニ弁当やサンドイッチを買ってきて「腹減ってるだろう、食え!」「うまいか、そうか」とだけ言って出て行った。恭平さんはそんな出来事を振り返り、「自分に寄り添ってくれるような、心の中のことをきちんと言ってくれるような先生でした」という。
その後、正道さんの退職をサプライズで祝おうと、恭平さんを中心に教え子へ呼びかけたところ体育館には100名以上集まった。
教頭先生に「体育館の工事の相談」だと誘導されてやって来た正道さん。横断幕が落ちて教え子たちが現れると「えっ?」としばし事態を飲みこめない。一斉に「阿部先生、36年間お疲れさまでした!」と言われて「なに? どうなってんの?」「えらい懐かしいの~」と教え子たちの顔を見て嬉しそうである。
すっかり大人になった教え子の女性から「中学校のバレーボール部時代は怖くて、厳しくて、その時に先生から養ってもらった忍耐力を、今社会に出て役に立っていると思います」と言葉を送った。別の女性は「ルーズソックスをだいぶ狩られまして、それが一番の思い出で、社会人としてちゃんとやっていけるのも先生のおかげだと思っています」と涙ながらに話した。
やがて奥から娘の菜々絵さんが「お父さん」と出て来たので、正道さんは「お前もか?」とさらに驚く。
菜々絵さんは子どもの頃に父が家にいなかったので「私より学校の方が大事なのかな、寂しいなと思ったこともありました」と切り出し、「そんな忙しいなかでも 貴重な休みに一緒にセミを捕まえに行ってくれたね。それなのに“お父さんが学校の先生じゃなかったらよかったのに”とひどい言葉もたくさん言って悲しい思いをさせてしまったね」と続ける。そして「学校のことで忙しかったのに、私まで遠回りをして迷惑をかけてしまって本当にごめんなさい。いつも支えてくれて本当にありがとう」とようやく謝ることができた。
さらに、この日分かったことから「こんなにたくさんの教え子さんたちに教員生活最後を祝ってもらえるお父さんを、本当に心から尊敬しています」「お父さんは世界一の先生であり世界一のお父さんです」との思いを伝えたのである。
正道さんは感動から言葉にならないなか、皆に向けて「よかったな…忙しいなかわざわざ来てくれてありがとう…良い思い出です」と礼を述べた。
スタジオでVTRを見た速水もこみちは、目を赤くしながら「サプライズなのに、ああいう形であれだけの人が集まることはなかなかない」との趣旨で振り返り、「そういうところで正道先生の人間性というか、温かさをすごく感じましたね」とコメントした。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)