アカウントページ設置から4日後の3月3日、突然ニッキーさんは見知らぬ女性から電話を受けることになる。その女性はニッキーさんにアカウントページのことを根掘り葉掘り質問したそうだ。サイトの運営者か関係者と思っていたその女性から「これまであなたは多くの批判を受けているが、それに対してはどういう気持ちか」と問われ、ニッキーさんにとってはまさに寝耳に水だったという。
その女性が有名な英メディアのレポーターであることを知り、急に不安になったニッキーさんは「まさか私のことを記事にしませんよね?」と聞くと相手は否定して電話を切ったという。慌てて「GoFundMe」にログインしページをチェックすると、18,000のシェアと多くの批判コメントが寄せられており、5,000ポンド(約685,000円)に設定していたゴール金額のうち集まった寄付金は10ポンド(約1,400円)であった。
予想もしなかった世間からのバッシングにショックを受けたニッキーさんは翌日、身内からの電話で「オンラインニュースであなたのことが報じられている」と聞き、さらに衝撃を受けることになった。しかも複数の英メディアが事実を否定的に捉え、ニッキーさんのことを「酷いシングルマザーだ」と批判する人々を擁護するかのような記事を目にして、パニックに陥った。「私は一切、彼らから取材費をもらっていませんし、欲しいとも思っていません。勝手に写真を使われ勝手に記事にされたのです」とニッキーさんは言う。
以降、ニュースが拡散された数週間は、ニッキーさんは食事も喉を通らず3週間で約4kgも体重が落ちたという。一歩も外へ出たくないほど気分が塞ぎ、このニュースのせいで何の事情も知らない娘たちが学校でいじめられはしないかと不安になった。そして案の定、中学生の長女は学校でニュースを知った生徒から「なんでお前の母親は、他人の金を盗んでるんだ」と大勢の前で言われ、いじめられてしまったのだ。ニッキーさんは長女に申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、自分が寄付金サイトにアカウントページを設置して寄付をお願いしたことを説明した。
すると長女はニッキーさんを優しくハグし「大丈夫よ、ママ。私たちがいるから負けないで」と慰めてくれたという。「娘たちを喜ばせてあげたいという一心でしたことで、逆に子供たちの人生を台無しにしてしまうかもしれない」とニッキーさんは長女に隠れて号泣したそうだ。
世間からの批判の中でも、特にニッキーさんがショックを受けたのが「寄付金サイトで旅費を集めるような親からは子供を引き離すべき」「5,000ポンドやるからお前の子供2人をくれ」という脅迫まがいのコメントだった。
ニュースが報じられたことにより「悪い親」としてのレッテルを貼られたニッキーさんを、家族や友人らはサポートし続けた。しかしニュースを信じた数人の友人は、ニッキーさんから離れていったという。落ち込んだニッキーさんだったが、「こんな残酷な世間の批判には負けたくない」という気持ちと、自分の心情をサイト上で訴えるために、閉鎖したアカウントページを再び設置し目標金額を10ポンド(約1,400円)に設定した。「そうすれば誰も寄付しない。でも私の気持ちはここで伝わるはず」と考えた末の行動だった。
すると今度はアメリカやオーストラリアのメディアがニッキーさんのアカウントページに目を留め、新聞社をはじめラジオ局、テレビ局がニッキーさんのことを取り上げた。それらはいずれもニッキーさんを支持する内容だった。当然、英メディアも取材を申し込んできたがニッキーさんは拒否、「GoFundMe」のアカウントページにこのように綴っている。
「私は悪い人間ではありません。寄付はあくまでもその人の意思であり強制的なものではないはずです。私は嘘をついたわけでも子供が病気だと偽ったわけでもなく、正直に“子供たちをディズニーワールドに連れて行くには、私の稼ぎだけではどうしても不可能だから助けてほしい”と伝えただけです。いくつもの英メディアで私たち家族のことを勝手に晒され、今はもう一切メディアを信用する気持ちにはなれません。私はただ、子供たちを幸せな気持ちにさせてあげたかっただけです。私以外に、車の購入費や胸の美容外科手術費用目的などで寄付金を集めている人もいます。今回、周りの人がもう一度アカウントを設置したらいいと励ましてくれたので、再設置しました。世間からの残酷な批判には負けたくありません。」
その後、アカウントページにはニッキーさんの心情を理解しサポートする128人から寄付が集まり、現在では6,692ポンド(約93万円)に達している。ほとんどの寄付はアメリカなど海外からだという。「本当に感謝のしようもありません」とニッキーさんは素直に感謝の言葉を述べた。
今回、英メディアと世間に激しく傷つけられ「もう二度とSNSは利用しない」というニッキーさんだが、海外メディアからは多くの支持を得たことに感謝しており、テックインサイトの取材にも「夏休みには絶対、娘たちをディズニーワールドに連れて行きたい。世の中には人を批判する人がいますが、サポートしてくれる人もいます。人間不信に陥っていた私ですが今回、海外からの心優しい人たちの声が心に沁みました。みなさんの親切は忘れません」と語った。
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(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)