イーアンさんの顔の周りの雪をもう一度払い、バックパックに入れていた緊急用のシャベルを急いで組み立てると、「オーマイガー」などと呟きながらほとんど半狂乱状態で雪を掻きだした。
なおイーアンさんは、スノーボード歴30年以上というベテランで、当時はグループと山の反対側で待ち合わせをしていたというが、「ツリーホールは予測できないが、本当に怖いもの」と語り、当時のことをこう振り返った。
「雪に埋もれた時、顔の近くに手があってね。呼吸ができる僅かな空間(エアポケット)を作ることができた。またスキージャケットで顔を覆ったことで、雪を飲み込まずに済んだ。それで救出されるまでの時間を稼ぐことができたんだ。」
「動画を見ると、フランシスさんが僕に話しかけているのが分かるけど、生き埋めになっている時に聞こえたのは自分の呼吸の音だけだった。あの時は『フィアンセに僕がどれだけ愛しているかを伝えることもできず、真っ暗闇の中で死んでしまうのだろう』などと考えていたね。」
専門家は「イーアンさんが自力で脱出するのは不可能。フランシスさんが救出しなければ命はなかっただろう」と指摘しており、イーアンさんはフランシスさんのことを「命の恩人」と呼んで感謝している。
これに対しフランシスさんは「動画では冷静に見えるかもしれないが、あの時はパニック状態で恐怖に震えていた。でもアドレナリンが放出されていたのだろう。自分の直感に従いできる限りのことをした」と明かし、山では1人で行動しないこと、そして緊急時に対応できるよう訓練を受けることを勧めた。またバックカントリースキーでは、アバランチ(雪崩)ギアと呼ばれるビーコン、プローブ、シャベルの3点セットを携行することも重要なようだ。
ちなみにフランシスさんのInstagramの動画には、次のようなコメントが寄せられた。
「見ていて心臓がバクバクした。この動画から学ぶべきことはたくさんある。こんなに冷静に人の命を救えるなんて素晴らしいと思う。」
「私は救急隊として20年以上働いているけど、あれは完璧な救助だった。深く穴を掘り、相手に話しかけながら冷静さを保ち続けた。あなたが彼の命を救ったのは間違いない。」
「この事故はどんなスキーの達人にも起きること。イーアンさんは本当にラッキーだった。一つアドバイスをするとしたら、ツリーホールにはまったら無駄に動かないことだ。崩れた雪でさらに深く埋もれてしまう可能性があるからね。」
「私はイーアンの友人。彼からこの事故のことを聞いた時、狭い所に閉じ込められる恐怖感とストレスを感じて動画を見るのをためらった。でも実際に見て、涙が出そうになった。彼を救ってくれてありがとう。」
画像は『ABC7 Chicago 2023年4月1日付「Snowboarder saved from being buried alive in viral video — and his rescuer — speak out on ordeal」(FRANCIS ZUBER)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)