今月15日にアフガニスタンの反政府勢力であるタリバンが首都カブールの大統領府を占拠してから、同国は混乱の渦に陥っている。混沌とした中で国外へと脱出を試みる人々の姿などが報じられたが、そんななかアフガニスタンで動物保護団体の代表である元兵士が保護施設内の170頭以上の犬と猫をイギリスへと避難させることに成功した。『The Sun』『The Daily Star』などが伝えている。
ここ数日、イギリスの動物愛好家らはアフガニスタンで動物の保護活動を続けているペン・ファージングさん(Pen Farthing、57)に注目している。ペンさんは18歳の時に英海兵隊に入隊し20年以上もの間、イラクやアフガニスタンでの任務をこなしてきた。彼は2006年にアフガニスタンで1頭の犬と出会い、その犬に“ナウザード(Nowzad)”と名付けて半年間一緒に暮らしたそうだ。
そして任務が終わるとペンさんはナウザードをイギリスに連れて帰り、英海兵隊を除隊後にアフガニスタンのカブールで動物保護活動を中心とした非営利団体「ナウザード(Nowzad)」を設立した。
ペンさんは犬や猫を保護する以外にも、戦地を経験したことが原因で「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」で苦しむ元兵士のたちのために、保護した犬をPTSD介助犬として訓練するなどの活動も行っている。2013年には「RSPCAアニマルヒーロー賞」を受賞し、他にもCNNの「2014年の英雄」の10人のうちの1人に選ばれておりその活動が称えられてきた。
しかしタリバンがアフガニスタン全土をほぼ制圧したことで、保護施設内の犬や猫そして団体のスタッフに危険が及ぶこととなった。そこでペンさんは妻カイサ・マルクスさん(Kaisa Markhus)を先に国外へと避難させ、さらに動物たちをイギリスへ避難させるためにジェット機のチャーター費用を補うための募金を呼びかけることにした。
ペンさんが「箱舟作戦(Operation Ark)」と呼ぶこの試みは多くの人から支持を得ることとなり、ついにエアバスA330をチャーターするまでの資金が集まった。そしてペンさんはこの飛行機に94頭の犬と79頭の猫に加え、68人のアフガニスタン人のスタッフや獣医を乗せてイギリスへ向かうことにした。
ところがここで問題が発生してしまった。英国防総省によるアフガニスタンからの犬や猫の退避許可が降りなかったのだ。『AFP』によると、ベン・ウォレス国防大臣は「タリバンからの報復を恐れる人々が空港で待機する中で人よりもペットが優先されるのは間違っている」と述べたという。
ペンさんは英国防総省の判断にひどく落胆したが、