何度も方向を変えながら彷徨うようにして泳ぐ鹿の姿が映っている。
「船に乗っていた女の子も『バンビだ! バンビだ!』と言っていましたよ」と話すマークさんは、乗っていた一家に「迂回して船に鹿を引き上げてもいいか」と尋ね、許可を得るとモーガンさんに助けをお願いした。
マークさんが船を操縦して鹿に近づき、モーガンさんが輪状にした縄を首にかけるという作戦で救助は進められたが、なかなか上手くいかなかった。何度かやり直し、3回目の挑戦でようやく鹿の首に縄をかけることができたという。
若いメスのアカシカとみられているこの鹿は、船の上に引き上げられると相当疲れていたようで倒れ込んでしまったそうだ。モーガンさんは「鹿は疲れ切ってただ横になっていましたよ。その間に柔らかい別のロープを使って鹿の足を縛りました」と救出時の様子を明かす。
出来るだけ早く自然にかえしてあげようと考えたマークさんは、近くの林に鹿を放っても大丈夫かどうかを港の職員に電話で確認しながら岸に向かって船を進めた。ぐったりとして横になっていた鹿だったが、岸に戻るまでの10分ほどの間に徐々に元気を取り戻していった。
職員との協議の結果、海岸近くで木々が生い茂るエリア「Nothe Gardens」へ鹿を放つことになり、船で到着したマークさんとモーガンさんは鹿を抱えて上陸した。鹿を木々の近くで下ろし、足を縛っていたロープを解くと走り去ったという。
現場には連絡を受けた港の職員らも鹿を見届けるために駆けつけており、無事に鹿を自然にかえすことができてマークさんを含め全員が安堵していた。ところが20メートルほど駆け上がっていったはずの鹿が、モーガンさんのもとへ戻ってきてしまったのだ。
「鹿は疲れていた様子だったので木のそばに放してあげたのですが、私たちの方へ帰ってきてしまったんです。私のそばまで来たので撫でてあげると、頭を擦りつけてきました。私はハグをして『もう大丈夫だよ』と伝えると走り去っていきました。」
この感動のシーンには、現場に居合わせた人たちから歓声があがったそうだ。
マークさんは「まるで鹿が私にお礼をしているような、とても素敵な瞬間でしたね。本当に無事でよかったです」と振り返っている。
画像は『Dorset Live 2021年8月17日付「Hero fisherman saves stranded deer from deep water at Weymouth Harbour」』『The Mirror 2021年8月17日付「Surprised fishermen rescue struggling young deer half a mile out to sea」(Image: Natasha Lloyd / SWNS)(Mark Bowditch / SWNS)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)