その家は、踏み入った警察官があまりの悪臭に何度も嘔吐を繰り返したほどの劣悪な環境だった。29歳の母親と23歳の父親(共に名前は明かされていない)が5歳未満の4人の子供と住んでいた家は、まるでゾンビ屋敷そのものであった。
子供たち4人はみな栄養失調状態で体には湿疹ができ、皮膚病を患っていた。台所にはスロークッカーの中にマリファナが入っていただけで何一つ食料は見当たらず、哺乳瓶にはカビが生えていたそうだ。喉が渇き空腹状態にある子供たちのために、警察官が外に食料を買いに出たほどだった。
子供の姿がそれを物語るように家の中は見るも無残な状態で、両親が4人の子供を育児放棄していたのは明らかだった。床には糞便のついたおむつがいくつも転がっており、子供たちの部屋は壁もカーペットも糞便まみれというまるで地獄絵図のような光景だったという。
歩行器に乗った赤ちゃんはおむつだけを付けた裸の状態で、そのおむつは頻繁に変えていないことがわかるほど汚れていた。さらにベッド枠に引っかかって泣き叫んでいた女児の周りには蠅が飛んでいたという。
裁判では、23歳の父親は「子供たちの母親が精神を病んで以来、自分はできる限りのことをしてきた。台所のシンクで子供たちの体も洗っていた」と言い、弁護人フィリップ・ボイド氏は「父親はあまりにも若すぎた。もし彼がもっと成熟した人間であったならば、困難に対応できるだけの適応力があっただろう。頑張ろうとするほど事態は最悪の状態になっていった」と弁護したが、今回の判決では1年2か月の実刑が科せられた。
また、警察の訪問時にも暴力的で落ち着きがなく叫ぶなどの行為を繰り返していた母親に対しては、マーク・スチュワート弁護士が「母親は育児放棄を恥じており、精神的に治療が必要な状況にある」と述べたことからも精神疾患があると認められたようで、リハビリ治療の要請とともに2年の執行猶予つき1年2か月の有罪判決が下された。母親は裁判で「子供たちは汚れたおむつを壁にこすりつける癖がある」と主張していたという。
あまりの劣悪な環境が裁判で明らかになると、マーク・ブラウン判事はこの件が2015年10月から明るみに出たにもかかわらず、両親の育児放棄に対して何の対策も取らずにいた自治体を批判した。そして「子供の幸せや福祉を全く考えていないゆえに起こった非常に嘆かわしい事件である」と述べた。
裁判では「子供たちは4人とも全く感情を表さず、まるでゾンビのようだった」という衝撃的な発言があった。育児放棄をしていた両親から救出された子供たち4人が得たのは、結果的には“自由”だが、5歳にも満たないこの4人にとってこれまでの出来事がトラウマとなり今後の社会生活に影響を与えないとは言い切れない。ランカシャー警察の公的保護課担当をしているリー・ブラッドショウ=ウッド巡査は「幼く情緒不安定な子供たちを命に関わる危険な状況に置いたことは、最悪の事態です。今後、同州の子供たちがこのような目に遭わないように、我々警察は子供たちの安全をより一層保護できるよう努めます」と話している。
出典:http://www.mirror.co.uk
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)