英ウィルトシャー州ソールズベリに暮らすニール・ロビンソンさん(50歳)とヘレンさん(54歳)夫妻は、双方の母親が妊娠中に風疹にかかったことがきっかけで生まれつき耳が聞こえず、手話と読唇術でコミュニケーションを図ってきた。
聴覚障害を持つ2人は、それでもひとり息子に恵まれながら幸せな家庭を築いてきた。実は今から2年ほど前に、ヘレンさんが人工内耳移植をしようとニールさんを説得したがなかなか同意せず、今回やっとニールさんをその気にさせたという。
2人はハンプシャー州イーストリーにあるナッフィールド・ヘルス・ウェセックス病院のティム・ミッチェル医師のもとで手術を受けた。その後、サウサンプトン大学にある聴覚学インプラントサービスで人工内耳移植後のテストを行ったところ、ニールさんとヘレンさんは50年以上経って初めて自分の声を耳にすることができたのである。
ニールさんは自分の声とスタッフのテストのための手拍子を聞いた後、感動のあまり涙をこぼした。そして結婚12年目にして初めて聞く妻の声に、「あまり好きな声じゃないな」と冗談を言いヘレンさんと笑い合った。
夫婦揃って人工内耳移植という例は、おそらく今回が初めてではないかとされている。人工内耳の手術は、頭蓋骨に非常に小さな電極を埋め込み電気電流を使って脳内の聴覚神経を刺激するというものだ。今後、ニールさんとヘレンさんは様々な音が聞き分けられるように人工内耳を微調整していくことになるという。
ニールさんやヘレンさんのように生まれつき聴覚障害を持つ人は突然聞こえなくなる人とは異なり聴覚システムがあまり発達しておらず、情報を処理し理解するまでに時間がかかることもあるとマー・グラスミーダー医師は述べている。
これまでなかった“音のある世界”を2人で味わえるようになった喜びは大きく、ニールさんは「信じられない気持ちでとても幸せです。朝、教会に行く時に車から降りると鳥のさえずりが聞こえてきました。こんなにうるさいものなのかと驚きました。これからももっといろんな音を聞くことができるのかと思うととても嬉しいです」と話している。
出典:http://www.express.co.uk
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)