ヨークシャー州ハルにある雑貨屋「サンガ(Sangha)」に1人の男が強盗に入った。スチュアート・グリーソン容疑者は数分店内をうろついた後、刃渡り約18cmのナイフをオーナーのカラムジット・サンガさん(Karamjit Sangha、49)に突きつけ「金を出せ」と要求した。
カウンター内にいたサンガさんは、ナイフを持ったグリーソン容疑者に平然と「私、今お茶を飲んでいるところなの」と返した。グリーソン容疑者はさらに「カップを置いて金を全部出せ」と要求するも、サンガさんは「だから、私は今紅茶を飲んでいるの」とまるで「あんた、見てわからないの?」というように男を見上げたという。
サンガさんはとても落ち着いており、一方でグリーソン容疑者は一目でドラッグ使用者とわかるような振る舞いであった。そのためサンガさんは一か八かの賭けに出たのであろう。手元にあったカッターを握りしめ、目の前で振り回すと「店から出て行って」と指示した。
まったく怯える様子を見せないサンガさんに、逆に男の方が震え出し逃走したという。サンガさんの夫が「男はナイフを持っている。警察に通報した方がいい」と言ったためにその通りにしたところ、警察官らが素早く駆けつけたという。
グリーソン容疑者は逮捕されたが、サンガさんの見事なまでの武勇伝はイギリス各メディアで報じられた。
通常ドラッグ常習者は、呂律が回らず目がうつろ、そして顔色も悪く常に怯えたような顔つき…と見た目でもそうだと分かりやすいのが特徴だ。サンガさんも一目でグリーソン容疑者がそうだと気付いたのかもしれない。とはいえ、危険ではない確証はどこにもなく、ドラッグ使用者だからこそ突拍子もない攻撃を仕掛けてくることも十分あり得る。
しかし、ナイフを突きつけられても動じることなく「お茶の時間」を主張したサンガさん。グリーソン容疑者も、まさかそんな態度に出られるとは想像もしていなかったはずだ。
犯人に気丈に振る舞ったサンガさんは、さすが誇るべき店のオーナー。紅茶を愛し、そして紅茶を飲む時間を大切にするという習慣をリスペクトしているイギリス国民ならではの堂々とした態度だ。「いかなる人であっても私の紅茶を飲む時間を邪魔することは許されない…」イギリス人にとって紅茶は日常のどんな時にも欠かせない飲み物であることを改めて実感した、驚きの事件と言える。
グリーソン容疑者には、強盗未遂と危険物所持の疑いで5年の実刑が科せられたという。
出典:http://metro.co.uk
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)