チャールズ皇太子戴冠の際に通常の慣例である王妃(HRH Queen Consort)ではなく「将来的」には正妃殿下(HRH Princess Consort)と称されることになると発表された。
これには理由がある。ダイアナ妃との離婚原因になったカミラ夫人とチャールズ皇太子の不倫関係は知れ渡っており、世論の2人についての印象は好ましいものではなかった。それ故にプリンセス・オブ・ウェールズではなくコーンウォール伯爵夫人を使用することになり、そして「将来的」には通常の王妃ではなく、正妃として称されることになると考えられてきた。
しかしながら王室専門家のロバート・ジョブソン氏(Robert Jobson)は、自身の著書『Charles at 70: Thoughts, Hopes And Dreams(チャールズ皇太子70歳 思考、希望、そして夢)』の中で「『将来的に』正妃と称されることになるという表現が声明で使われたのは、大衆にカミラ夫人に対する(冷え切った)感情を温めてもらう時間を与えるためだった」と綴っている。つまりチャールズ皇太子が晴れて国王になった暁には、カミラ夫人に王妃(Queen Consort)の称号を与えるべく、長い時間をかけて国民の理解を得ようとしていたと見る向きもある。
しかし憲法の専門家ボブ・モリス氏(Bob Morris)は、カミラ夫人が王妃の称号を辞退するかもしれない2つの理由について述べている。ひとつ目の理由は故ダイアナ妃の衰えぬ人気だ。
「つい先日にも、故ダイアナ妃の生誕60周年を記念した銅像の除幕式が行われましたが、このダイアナ妃の変わらぬ人気はカミラ夫人の称号問題のひとつの障壁になっています。ダイアナ妃を記念する何かが行われるたびに、カミラ夫人に対する大衆の感情が呼び起されてしまうからです。」
ふたつ目は、王室メンバーはイギリス国教会のアングリカン・チャーチ(Anglican churches)で執り行われた結婚が正式であると法律の専門家達の間では考えられてきたという点だ。世論の感情に配慮してウィンザー・ギルドホールで執り行った民事婚の後、ウィンザー城の聖ジョージチャペルに移動してカンタベリー大司教に祝福を受けるという形を取らざるを得なかったチャールズ皇太子とカミラ夫人の結婚は「正式ではないという若干“古風”な議論がある」とモリス氏は語る。
「女王が崩御され、チャールズが王となり、自動的にカミラが王妃となった場合には、この2005年に行われた結婚の法的有効性を問う人が出てきても何ら不思議ではないと思います。そこまで過激な主張にはならないかもしれませんが、なにかしらを駆り立てるものになることは確かでしょう。」
これら少なくともふたつの大きな障壁がカミラ夫人の称号問題に立ちはだかるが、そもそもチャールズ皇太子は結婚する前からカミラ夫人を王妃とすることを決めていたという。王妃としてQueenの称号を得ることによって、カミラ夫人はエリザベス女王の亡き母クイーンマザー(Queen Mother皇太后)と同等の非常に高いステータスを獲得することになる。
なお2018年、チャールズ皇太子のウェブサイトから「カミラ夫人は将来的に正妃と称されるようになる」という記述が削除されている。
クラレンスハウスは、カミラ夫人の称号に関しては彼らが結婚した時と変化はないとする声明を発表したが、クラレンスハウスのスポークスマンは「よくある質問は定期的にアップデートされています。比較的長い間、この件に関する質問が寄せられていないので、扱っていないだけです」と語っていた。
数日前に74歳の誕生日を迎えたカミラ夫人は、正妃として称するようになればイギリス王室史上初のこととなる。
(TechinsightJapan編集部 Aya Nezu)