重度の破傷風で飼い主に見放された犬をどうしても諦めることができなかった獣医は、夜もほとんど寝ずに看病を続けた。そして3週間後、身体が硬直し頭を上げることすらできなかった犬に奇跡が起こった。諦めずにケアを続けた獣医と、果敢に病気と闘った犬の希望溢れるニュースを『The Dodo』などが伝えている。
米フロリダ州マナティー郡ブレーデントンの獣医アリー・トンプソンさん(Ali Thompson)のクリニックに4月15日、生後13週のメスのピットブルがやってきた。口を閉じ、瞼をひきつらせ、身体が麻痺してまるで板のように硬直したその犬を一目見て、アリーさんは破傷風に感染していると直感した。
破傷風は散歩中の怪我や手術、火傷などの傷口から破傷風菌が入り込むことによって感染し、四肢の強直やけいれんが起こる。犬の感染は稀だが、感染した場合の生存率は30~50%と言われ、重症化すると呼吸困難に陥り死に至る。搬送されてきたピットブルはかなりの重症で、アリーさんが電話で飼い主にその旨を伝えると「高額な治療費を払うことができない。安楽死させてくれ」と返事があった。
アリーさんは「お願いだから、助けてあげて!」と心の中で叫びながらも、飼い主の決断が覆らないであろうことは分かっていた。そして恐怖と混乱で悲しい目をしたその犬を“バニー(Bunny)”と名付け、「自分が獣医になったのは、動物の命を救うため。私がこの犬の面倒を見る」と覚悟を決めた。アリーさんは飼い主に「治療を続けること、助からないかもしれないこと、助かった場合でも所有権は放棄してもらうこと」などの承諾をもらい、バニーの治療を開始した。
しかしバニーの治療は過酷を極めた。アリーさんはバニーが音や光に敏感に反応して筋硬直が悪化するのを防ぐため、アイマスクをつけて自宅の暗い静かな場所に移した。最初の夜はほどんど眠らず、身体の痙攣が止まらないバニーをモニターし、栄養剤をシリンジで与え、喉の渇きを防ぐため点滴をした。
アリーさんによると、バニーのように症状が深刻な場合は医師と看護師数人がチームを組み24時間体制で治療を行うのが普通で、アメリカでは治療費が約100~150万円にもなるという。バニーの痙攣は10日間も続き、