エミリーさんに状況を話した。彼女はマークさんの力になろうと1時間ほど電話で応対したが、許可なく資金の保留を解除することができないため、どうすることもできなかった。しかしその日はクリスマスイブ、聖なる日を前にエミリーさんはどうしてもマークさんを放っておくことができなかった。
そしてマークさんの「たった20ドル(約2200円)分のガソリンがあれば家まで帰れるのに…」の一言に心を揺さぶられ、思わず「ちょっと待ってください!」と返し、上司の許可を得てコールセンターから14マイル(約22.5キロ)先のガソリンスタンドにいるマークさんに会いに行くことにした。
マークさんはエミリーさんの申し出を一度断ったものの、彼女の意志は固かったようだ。エミリーさんはのちに「(自分のポケットマネーから)現金20ドルを彼に手渡して、『メリークリスマス』と告げて別れた後、またすぐオフィスに戻って仕事に就きました」と明かしている。
そしてこのやり取りがあった翌週の30日、エミリーさんはいつも通り仕事を終えた。しかし翌日の大晦日に出社すると、地域統括マネージャーが「申し訳ないんだけど、あなたは顧客との不正なやり取りをしたことで同銀行はあなたをこのまま雇うことはできなくなったの」とエミリーさんに告げ、解雇を言い渡されてしまったのだ。
エミリーさんは思わず「顧客に親切にした私をクビにするんですか?」と尋ねたが、マネージャーは「もし顧客が(悪い人間だったら)あなたを誘拐したり銃で撃つこともできたかもしれないでしょう」とエミリーさんの身の安全を考えてのことだと返した。さらにマークさんと会うことをエミリーさんに許可した上司も解雇されたそうだ。
解雇されたエミリーさんは当初、同銀行に復帰したいと思っていたが、今となっては銀行の意向に懸念を持っており「そんな銀行のもとでは働く気もなくなった」と話している。
一方で、エミリーさんの解雇を知ったマークさんは「銀行の判断は馬鹿げている! 私はUSバンクの顧客で助けが必要だったんだ。彼女は業務以上の親切を私にしてくれた。銀行の決定は本当に気分が悪い。私を救ってくれたのは彼女だけだったんですよ」と怒りを露わにした。
またマークさんが小切手を現金化できたのは、クリスマスが過ぎた数日後だったそうだ。このことにエミリーさんは「あの時、解雇されることを知っていたら、すぐにでも彼の小切手の保留を解除していたわ!」と憤りを見せている。
エミリーさんは同銀行で過去2年間、12回もの賞と感謝状が贈られるほどの仕事熱心な行員だった。彼女はメディアのインタビューに「世界を変えることはできないかもしれないけど、マークさんの時のように、その1人の世界(人生)を変えることができます。私の道徳心は2年半献身的に働いた仲間を捨てることを何とも思わない人より、喜んで人々のサポートをする人と同じでありたいと思っています」と語っている。
画像は『OregonLive.com 2020年1月17日付「U.S. Bank employee says she was fired after Christmas Eve act of kindness」(Stephanie Yao Long)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)