周りの優しさをしっかりと感じていたのだろう。タカはスタッフに甘えるようになり、少しずつ元気を取り戻していった。
火事から約2か月後、火傷専門センターの医師らによってタカの目の周りの皮膚移植手術が行われた。これによってタカは新しい瞼を手に入れ、再び瞬きができるまでに回復した。さらに今年1月、タカに新しい家族ができた。ケア・モア動物病院に搬送されてきたその日からタカの世話をしてきた動物看護師のクリスタル・レズリーさんが、タカを自宅に引き取ったのだ。
クリスタルさんはタカの飼い主になったことについて、このように語っている。
「タカは他の飼い主のもとで数日過ごしたのですが、相性が悪く戻されてしまったのです。もともと12月から我が家で一時的に預かっていたので、タカは私が責任を持って面倒をみると心に決めました。何故かわかりませんが、『きっとタカは私のところにやってくる運命だったんだ』と直感したのです。」
「我が家に住むようになったタカですが、他の犬たちに馴染めずに喧嘩をしかけるので、うちで飼うのも無理なんじゃないかと悩みました。タカはこれまで十分つらい思いをしてきていますからね。本当に心が痛みました。」
「そんな時でした。『タカをプロのもとで訓練してみては?』と提案を受けたのです。ハッとしましたよ。タカはもう9歳でしたから、今更しつけや訓練を始めようなど考えもしませんでした。」
その後タカは、「ケーナイン・トレーニング・プロジェクト(Canine Training Project/CTP)」で本格的に訓練を受けることになったのだが、そこで新たな出会いが待っていた。
タカの訓練を担当するCTPの創業者マンディ・フォスターさんは「犬も年をとると躾に時間がかかりますが、訓練に遅すぎるということはありません。タカとはまず基本の訓練から始めています。一筋縄ではいかないこともありますが、タカはとても優秀ですよ」と明かし、次のように続けた。
「タカは火傷の傷を一生背負って生きて行かなければなりませんが、私たちはタカを火傷被害者に寄り添うセラピー犬に育てたいと思っています。それにはまず、愛犬家団体『アメリカンケネルクラブ(AKC)』が行っている優良犬の認定試験である『グッドシチズンテスト(Good Citizen Test)』に合格しなければなりません。それをクリアして初めてセラピー犬としての訓練が始まります。私はタカをなんとかして助けてあげたいのです。タカの気質はセラピー犬に向いているし、タカなら火傷をした人の気持ちが誰よりも分かるでしょう。それに患者は、嫌でもタカの火傷の痕を見ることになりますからね。タカがセラピー犬として活躍することは、多くの人に希望を与えると確信しています。」
マンディさんのこんな提案に、涙を流して喜んでいるのはクリスタルさんだ。
「マンディさんのおかげで、私はタカと一緒にいることができるのです。タカは火傷の苦しみを知っています。そのタカが火傷で苦しんでいる人の励みとなり、長いトンネルの先の光となってくれたら、これ以上嬉しいことはありません。」
ケア・モア動物病院のFacebookにはタカの回復の軌跡が投稿されており、タカやクリスタルさんへの応援メッセージも多数寄せられている。タカはグッドシチズンテストを先週末に受けることが伝えられていたが、その結果はまだ更新されていない。長いトンネルを抜け出したタカが、セラピー犬に認定されるニュースが届くのを楽しみに待つことにしよう。
画像は『Care More Animal Hospital 2019年1月4日付Facebook「Crystal giving Taka one last kiss」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)