そこで初めて車内に乗せていた娘の存在に気付き、叫び声をあげた。この日の外気温はおよそ26度、朝から8時間以上車内に放置されていたレミントンちゃんは、皮膚が紫色に変わりすでに意識がなかった。自分がしたことに気付いたニコルはパニックになり、駐車場でつまずきながら娘を抱えて職場へと走った。事態を察した医療チームらがレミントンちゃんの蘇生を試みたが上手くいかず、レミントンちゃんは車で2分ほどの距離にある「Mercy Medical Center(マーシー医療センター)」に緊急搬送された。そこは奇しくも、レミントンちゃんの父ピーターさんが12時間ほど前まで夜勤をしていた病院だった。しかし残念ながら、レミントンちゃんは死亡してしまったのである。
ニコルは同日に第2級過失致死罪で逮捕され、ダグラス郡刑務所に拘留された。ニコルに接見し、ダグラス郡に起訴を取り下げるよう働きかけているデイビッド・テリー弁護士は、その時の様子をこのように話している。
「排泄物にまみれた汚れた独房に入れられたニコルは、髪を掻きむしりながら自分も死なせて欲しいと懇願していました。ニコルにとって、人生の光ともいうべき存在の娘が車中で絶命しているのを発見したのです。毎日のルーティンとは異なった行動が、このような悲劇を招いてしまったと言えるでしょう。私が連絡を聞いてMercy Medical Centerに駆けつけた時、女児はチューブを通されたまま息絶えてベッドに横たわっていました。父親は、娘に覆いかぶさってずっと号泣していました。私の40年のキャリアの中で、この件は最も悲しい事故のひとつです。」
その後、検視官らはレミントンちゃんの死因を事故として断定した。車中に我が子を放置し死なせる事件や事故は繰り返し報道されるが、自らの過ちにより最愛の娘を亡くしてしまったニコルには世間からの同情が寄せられ、この悲劇に集められた寄付によって6月22日、ニコルは5万ドル(約550万円)の保釈金を支払い保釈された。29日、レミントンちゃんの追悼式がニコルとピーターさんによりひっそりと行われたという。
このニュースを知った人からは「悲劇には違いないけど、保育園に送っていくつもりの子供を車に乗せておいて、忘れて置き去りにするというのがどうしても理解できない」「毎日のルーティンが変わると、ふっと記憶が抜けてしまうことは誰にでもあるのでは。今回は、母も子供もどちらも気の毒本当に悲劇的な事故だと思う」「でもどうやったら忘れるなんてことが起こるの。信じられない」「実際にそういう事故が過去にもあったじゃないか。そして今回もそういう事故が起こってしまった。決して“あり得ない”とはいえないんだよ」「過去にも父親が保育園に連れて行くのを忘れて仕事に行って車内に放置された子供が亡くなったというニュースがあったよね」「最愛の娘をこんな形で失って、親としてはやりきれないだろうし、一生罪を感じずにはいられないだろうね…本当にお気の毒」といった声があがっている。
画像は『OregonLive.com 2018年6月29日付「A hot car, a dead child: Oregon mom’s lawyer explains how it happened」(Courtesy of the Engler family)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)