ロンドンを目指す人が意外にも少ないのはなぜか、冷静に考えてみることが必要である。
「英王室の大ファンでウィリアム王子の時はロンドンまで行ったけれど、今回はわざわざ行かない」という人々は、おそらくBBCが最高のポジションから撮影し、世界に向けて放映する美しい映像をお茶の間で楽しむことが一番だということを知っているのであろう。また宿泊先の確保の難しさもある。お二人の挙式予定日が発表となった昨年11月に素早く行動に移した人々はアクセス性にも優れた、レビューポイントの高いホテルを押さえたはずだが、後手に回ったらリーズナブルな価格のホテルなどこの時期残っているとは考えにくい。もっとも値が張るホテルしか取れなかった場合は、ロンドンの地下鉄「Tube」をうまく乗り継いで足代だけでも浮かすよう努めるしかない。
そして最大の理由は、今のロンドンは本当に危険でどこへ出かけても厳しいセキュリティチェックが待ち受けていること。まずは空港入国管理局のそれは厳しいチェックにより、ロングフライトの疲れにもかかわらず長蛇の列ができている。何しろ“世紀のロイヤル~”という一大イベントであり、渡航者にも理解と協力が強く求められるのだ。サッカーと同じようにお祭りムードの大興奮でつい浮かれ、調子に乗って目立つ行動をするファンもいるのだろうが、大人しくしていることが吉と言える。
また英陸軍の兵士としてアフガニスタンに駐留していたヘンリー王子について、イスラム過激派が殺害目標リストのトップとしていることはよく知られている。気の毒なことにメーガンさんまでその“万が一”に備えた特別な訓練を受けているそうだ。そして、挙式当日に危険スポットとされる現場にいなければよいというものでもない。たとえばドイツではビールの祭典「オクトーバーフェスト」が狙われると毎年のように騒がれるが、2016年に実際にテロが起きたのはその開催時期より前で、ミュンヘンの郊外となるバイエルン州アンスバッハで開かれた野外音楽祭であった。出回っている報道や情報の裏をかくのが彼らの常とう手段である。
昨年、深刻なテロ事件が多発したイギリス。3月にウェストミンスター橋でテロ犯が運転する暴走車が人々を次々とはねて逃走し、警察官をも刺殺。4名が尊い命を奪われてしまったことは記憶に新しい。5月には人気歌手アリアナ・グランデがコンサートを開いたマンチェスターの会場で爆弾テロが発生し、22名が死亡。6月にはロンドン橋で車が暴走して人々を次々とはね、飲食店にいた人々をナイフで急襲。8名が死亡し、40数名の負傷者を出した。そして9月にはロンドン南西部のパーソンズグリーン駅で爆発物によるテロ事件が発生し、30名以上が手や顔にやけどなどを負った。「イスラム国(IS)」は事実上崩壊したなどと甘く考えてはならず、群衆、人だかりといった言葉が大好きな彼らは虎視眈々と次のチャンスを狙っていると考えなければなるまい。テロ対策に敏感になりすぎるなという方が無理であろう。
とはいえテロの危険性について議論してばかりはいられない。行くと決めた英王室ファンは心から楽しみに出かけることであろう。せっかく今のロンドンに出かけるのであれば、やはり旅の醍醐味はヘンリー王子とメーガンさんのご成婚を祝福するパレードの大きな感動を自分の目で、耳で、肌で感じてくるに尽きる。19日のパレードを見ずして今のロンドンの興奮は語れないのだ。そんな皆さんはどうか最後まで安全な旅を心がけ、存分に楽しみ、最高の土産話を日本に持ち帰って頂きたい。
画像は『Express.co.uk 2018年3月30日付「Royal Wedding: Windsor will be turned into FORTRESS for Meghan and Harry’s big day」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)