10月25日から東京・六本木を中心に開催中の『第30回 東京国際映画祭』で第4回『SAMURAI(サムライ)賞』を授賞したミュージシャンの坂本龍一(65)が11月1日、受賞を記念したスペシャルトークイベントに登場した。これまでに『戦場のメリークリスマス』を皮切りに、『ラストエンペラー』『レヴェナント:蘇えりし者』『怒り』などいくつもの映画音楽を手がけてきた彼が「映像と音の関係」について制作秘話などを語った。
一般の聴講者を前に登場した坂本龍一は、まずモデレーターを務めた音楽・文芸評論家の小沼純一氏からSAMURAI賞の受賞を祝福されると、「よく分からないですけど、侍ですかね?」と笑わせた。同賞は東京国際映画祭により、比類なき感性で「サムライ」のごとく常に時代を斬り開く革新的な映画を世界へ発信し続けてきた映画人の功績を称えるものだ。
トークイベントで坂本龍一は、映画音楽を手がけた最初の作品『戦場のメリークリスマス』(1983年)で、音楽を担当することになったきっかけから語り出した。「生意気ですが自分からオファーしました」と述懐した坂本は、大島渚監督から俳優として出演してほしいと言われ「何を血迷ったか、『音楽もやらせてくれるなら出てもいい』と言った。大島さんは『お願いします』と。役者をやるのも初めて。(映画音楽をやるのも初めてで)初めてのことが2つも重なった。大島監督は勇気あるなーと思いますね」と感心した。
実際に曲を作り始めたが「大島監督は教えてくれない。『好きにやってくれ』と言われてもねぇ…」と手探りで始めたようだが、まずテーマを考えたという。「メリークリスマスだからクリスマスソングだろうと。有名なクリスマスソングを改めて聞いてみると、鐘のような音が入っていることが多い。だけどこの映画のクリスマスは南洋ですよね」と理詰めで考えて2週間ぐらい試行錯誤した。するとある日の午後にビアノであれこれやっていたところ「ふと意識がなくなったんですよ。すると目覚めてみたら譜面が書いてある。便利ですよね。基本となるのは一瞬でできたので自分で作った気がしないんですよ」と驚きのエピソードを明かした。