タイやカンボジアをはじめアジアのリゾート地では、いわゆる“象乗り”が人気を博している。しかしゾウたちはそれを決して楽しんでやっているわけではない。飼育員のムチが怖いだけである。同じことを野生のゾウたちに強いたらどうなるか答えは明白であろう。このほどジンバブエの国立公園で…。
観光ツアー客の世話人がゾウに殺されるという事故が起きたのは、ユネスコの世界遺産に登録されている「ヴィクトリアの滝」を擁するジンバブエのビクトリア・フォールズ国立公園。ここで観光ツアーを提供していた「アドベンチャーゾーン」社の象乗りのハンドラー、エノック・クファンダダさん(50)が“ムバンジェ”というゾウに押しつぶされて死亡した。
「アドベンチャーゾーン」社では、オスのムバンジェとメスのヌカニエジの2頭が観光客を乗せて歩くツアーを提供していたが、ムバンジェはそれにフラストレーションを募らせていたもよう。エノックさんを攻撃して死なせたムバンジェは、国立公園で野生動物の管理にあたる「Zimbabwe National Parks and Wildlife Management Authority」のレンジャーにより射殺された。30歳の若さであったという。
近年ツアー現場でゾウが観光客やハンドラーを殺す事故が絶えず、ジンバブエの全国動物虐待防止協会(Zimbabwe National Society for Prevention of Cruelty to Animals:ZNSPCA)をはじめ、多くの動物愛護団体が「ゾウを家畜化することは残酷で許されない。幼い頃に人間に捕獲されて小さな檻に入れられたゾウたちは、家族から引き離された悲しみに加え、拷問を受けながら人を乗せて歩くことや曲芸を強要される。これは後にどんな悲劇をもたらしたとしても不思議ではない」と批判。ゾウにも復讐心があることを強く警告している。