米ネバダ州ワショー郡に暮らしていた70代の女性は数年前、インドを訪れた際に右大腿部を骨折。現地の病院で複数にわたり治療を受けていたが、右臀部と大腿骨に感染症を起こし激しい痛みを伴うようになってしまった。そのため昨年6月にインドでの治療を打ち切り、8月中旬には米ネバダ州リノにある病院を訪れた。しかしそこで「カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)」に感染していることが判明し、入院から2週間後の9月に敗血性症ショックにより死亡した。
亡くなった女性のCREサンプルを分析した「アメリカ疾病予防管理センター(CDC)」のトム・フリーデン医師は、CREを「悪夢のスーパーバクテリア」と呼ぶ。“常在菌”として人間の体内に存在する腸内細菌だが、変異を起こすと悪夢の細菌CREになるという。
CDCによると、女性から検出されたCREは米国内にある26種全ての抗生物質に耐性を持っていた。そのためこれまでインドで抗生物質の治療を受け続け、免疫力が低下した女性を救うことができなかったとのことだ。
CDCのアレクサンダー・カレン医師は、『STAT News』に「抗生物質は次から次へと開発され使用されてきましたが、薬に対する耐性菌が次々と現れ、抗生物質の開発が間に合わないという状況になりつつあります」と語る。
また「Antibiotic Research UK(英国抗生物質研究所)」の主任研究員であるデイヴィッド・ブラウン医師は「現存する抗生物質が全く効かないというのは非常に珍しいケースです。しかし医療機関の感染対策が不十分であったり、海外旅行などで衛生環境が悪く耐性菌によって汚染されている地域に行くことによってこのようなケースはますます増えていくでしょう。高度な薬剤耐性菌を持つ感染者が世界中に拡散するのも時間の問題かもしれません」と懸念を示している。
出典:http://www.bbc.co.uk
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)