へその緒だけでセリーンからぶら下がっていた。
地面に落ちてしまうのではないかとヒヤリとするが、セリーンは足でぶら下がる通常のポジションに戻るとすぐに赤ちゃんを抱きかかえた。その後、出産を終えたセリーンのもとには仲間の“シマ(Sima、4歳)”が近寄り、一緒に赤ちゃんを舐めてケアを始めた。シマは昨年11月に、同園で初めて誕生した同種のコウモリ“ハドリアン(Hadrian)”の母親だ。
これまでに、コモロオオコウモリが我が子以外の世話をする“アロペアレント・ケア”を行う姿は、一度も観察されたことがなかった。同園は、「今回アロペアレント・ケアのシーンも撮影できたことで、コモロオオコウモリが考えられていたよりも複雑な社会性を持っていることが証明されました。これは同種のコウモリだけではなく、コウモリ全般の知名度や認識を高めることに繋がります」と説明する。
コモロオオコウモリは野生で約1200匹、飼育環境下では約120匹しかいないとされており、世界で3つの動物園でしか飼育されていないため、出産の現場に立ち会えるのは珍しい。毎日世話をしている飼育員ですら、出産に立ち会えたことに驚いていたそうで、出産の一部始終を捉えた映像は非常に貴重なものとなった。
また驚いたことに、セリーンのあとにも“ティア(Thea、2歳半)”という別のメスが出産していることが分かった。同時期に誕生した2匹の赤ちゃんコウモリは元気に成長しており、生後3か月頃から徐々に親離れが始まるそうだ。
同園の学芸員マキシン・ブラッドリーさん(Maxine Bradley)は、このように当時を振り返っている。
「このような希少種が誕生する瞬間に立ち会うことができたのは、信じられないような瞬間でした。また、こうしてカメラに捉えて世界に発信できたのは、息を呑むような素晴らしい経験になりました。」
「20メートルほど離れた場所から、セリーンの出産を手助けできずに見守ることしかできず、『ダメかもしれない』と思う瞬間もありました。しかし無事に出産を乗り越えてやり遂げたセリーンを見て、一安心しましたね。」
セリーンの出産がきっかけで、ある大学から連絡があったと言い、出産過程におけるアロペアレント・ケアや他のコウモリとの関係性などに関する論文が執筆・発表される予定だという。また同園では、コモロオオコウモリの野生の個体数を増やすためにコモロ諸島を拠点に活動する非政府組織「Dahari」をサポートしていると言い、教育目的のため同組織にも動画が共有された。
マキシンさんによると、同園でのコモロオオコウモリの展示は、同種のコウモリだけでなくコウモリ全般の知名度や認識を高めることを目的にしているそうで、こう明かしている。
「このコウモリはミッキーマウスのような耳や大きな目、キツネのような毛並みの可愛らしい顔つきをしています。今後もコモロオオコウモリの繁殖を続け、願わくは再び出産やアロペアレント・ケアなどの行動を動画に収めたいですね。」
ちなみにセリーンの出産動画を見た人々からは、「これは思わず見入っちゃうね」「自然は素晴らしい」「動画を見ながら、思わず息を止めちゃうほどハラハラした」といったコメントが寄せられていた。
画像は『Northumberland Zoo Facebook「EXTREME BUNGEE-JUMPING BABY BIRTH」』『ND Mais 「‘Superporca’ dá à luz 41 leitões em granja no interior de Faxinal dos Guedes」(Foto: Reprodução/Portal Faxinal /ND)』『AL.com 「Spotted eagle ray flies into boat at fishing rodeo, sends Alabama woman to ER: ‘We were both in the wrong place’」(Courtesy of April Jones)』『New York Post 「Shark at Chicago zoo gives birth — without ever having contact with a male」(Jim Schulz / CZS-Brookfield Zoo)』『Fort Worth Zoo Instagram「A little peek into Jameela’s first few days.」』より
(TechinsightJapan編集部 iruy)