ちょうど観に来ていた鶴瓶とタモリも舞台にあがったそうだ。というのも、この『廓噺山名屋浦里』のもととなった鶴瓶の落語ができたのはタモリの提案によるものだという。勘九郎は「『ブラタモリ』で(タモリが)吉原を歩いていたら(この話を)聞いたんですって。『いいとも』の楽屋で鶴瓶さんに『こんな話があるから落語にしたらどうだ?』ってタモリさんがおっしゃって、それが落語になって歌舞伎化した作品」とタモリの関わりを明かした。
勘九郎は「普段歌舞伎にはカーテンコールはないんですけど、お客様の拍手が鳴り止まないので挨拶して、ちょうど鶴瓶さんとタモリさんが観に来られていたので、2人が歌舞伎座の舞台にあがってくださって一緒になってご挨拶したのが忘れられないですね」と感慨深そうに語ると、七之助も「ちょっと忘れられないですね」としみじみ口にした。「今回も必ず観に来てくれるということなので嬉しく思っています」と互いに楽しみにしているようだ。
また『越後獅子』では勘九郎の長男・中村勘太郎が出演するが、勘九郎は「父が遺してくれたもの、その空間に出て欲しい。子どもの頃に出て大人になってどのぐらい覚えているか分からないですけど、出たという記憶や劇場の空気を味わうのと味わないのは全然違うので、父が遺してくれた赤坂大歌舞伎に出してあげたいなと思っていた」と胸のうちを明かした。「ありがたいですね。10歳で一人で踊るのはなかなかできないことなので、本人も絶賛稽古中です」と勘太郎も意欲的に取り組んでいるとのこと。勘九郎は「私が初めて踊ったのが9歳かな。8月の納涼歌舞伎の第2回目のときに『越後獅子』を踊らさせていただいて、歌舞伎座という広い舞台ですけど、とても楽しかったのを覚えているので、堂々と踊って欲しいなと思いますね」と父親の顔も垣間見せた。
会場のTBS赤坂ACTシアターはこの公演をもって改修工事に入るが、「赤坂」のタイトルが入っている『宵赤坂俄廓景色』について七之助は「(いったん)赤坂ACTがフィナーレなので、今までの恩返しじゃないですけど、華やかに大団円という舞台や踊りにしたいと思います」と思いを込めた。同作には勘九郎の次男・中村長三郎も出演する。
赤坂の人々について「町ぐるみで応援してくださる」という勘九郎。七之助も赤坂では普段歌舞伎を観ない若者からも「面白かった」とよく声をかけられるそうで「銀座を歩いていてもあまりないですよ」と印象を語った。その『赤坂大歌舞伎』は2021年11月11日から11月26日までTBS赤坂ACTシアター(東京港区)で開催される。
(TechinsightJapan編集部 取材・文:関原りあん)