プロの料理人にとって研ぎ澄まされた味覚は必要不可欠なものだ。しかしシンガポールでシェフをしていたオーストラリア人男性が、歯の治療により味覚障害になったことで仕事を失ってしまった。男性は歯科医を訴えていたが、このほど決着がついたようだ。『AsiaOne』『TODAYonline』などが伝えている。
シンガポールの高級レストラン「Tippling Club(ティップリング・クラブ)」は、ミシュランガイドで紹介されたこともある名店だ。この店で働いていたオーストラリア人のパウウェル・ガイェウフスキーさん(Pawel Gajewski、32)は、同僚も認めるほどの敏腕シェフだった。
2013年4月23日のこと、パウウェルさんは親知らずを抜歯するため歯科医を訪れた。リー・トン・リン医師(Lee Tong Lynn)が治療にあたり3時間を費やしたが結局、抜歯はできなかったそうだ。
ところがこの抜歯の最中に舌の神経が損傷してしまい、舌の右側で食感、温度、味を見分けることができなくなってしまった。残念なことにパウウェルさんの右舌の味覚障害は回復する見込みは無いとのことだった。シェフとして味覚はとても重要だったこともあり、パウウェルさんはリー医師を訴えることにした。
その後もなんとか仕事を続けたパウウェルさんだが、2015年12月に「ティップリング・クラブ」を辞め、オーストラリアに帰国することになってしまった。
パウウェルさんは19歳から、コペンハーゲンの「ノーマ(noma)」やパリの「Guy Savoy(ギー サヴォワ)」などミシュランの星がついた世界中のレストランでシェフを務めてきた。しかし人生そのものと言っても過言ではないシェフの仕事を、