THE ALFEE・高見沢俊彦が執筆した初の小説『音叉(おんさ)』が好調だ。小説誌『オール讀物』で連載した本編に加えて、書き下ろしスピンオフ短編も収めた単行本が7月13日に発売されたが、紀伊國屋書店や三省堂書店などの部門別ランキングで1位を獲得、7月20日に早くも重版が決定した。テックインサイトでは小説家として順調なデビューを果たした高見沢俊彦から話を聞いた。
小説『音叉』は、バンドとしてプロデビューをめざす若者の恋と葛藤を描いた青春小説。高見沢自身も影響を受けた、学生運動、フォーク、ロック喫茶など、若者文化が花開いた70年代が舞台となっている。
■書きたかったのは「ネットがない時代の恋愛」
―単行本発売おめでとうございます。カバーにちりばめられているホログラムが綺麗ですね。
高見沢俊彦:(発売元の)文藝春秋、渾身の力で。ホログラムの使用は初めてみたいですよ。
―私も読ませていただきました。バンドの話ということで最初はエンターテインメント性の高い小説かと思いましたが、実際に起こった事件も出てきて、時代を色濃く感じることができました。また若者たちがアイデンティティを模索したり、みんな真摯に生きているように感じました。
高見沢:そのような人が多かった気がします。僕が書きたかったのは、ネットがない時代の恋愛なんですよ。今はネットで常につながっている状態ですよね。とは言っても、心と心がつながっているかというと、カフェで恋人同士がLINEで話したりという話を聞くと、ちょっと違う感じがするし。僕たちがネットのない時代にどうやって彼女や友だちと会っていたのかを思い返すと、やはり大変な思いだったよね。電話しかなかったし。電話といってもケータイがないから家電でしょ。家族が出るかもしれないという面倒臭さを抱えながら会っていたような気がするんですよ。会っている時間はものすごく密度が高かったし、人間関係が男も女も密だったような気がするんだよね。そこでの恋愛、事件、友情関係を一冊の本にまとめたかったんですね。
■自伝ではありません!
―『音叉』は、自伝ではなくフィクションということですが、主人公の名前(雅彦)に高見沢さんと同じ「彦」の文字がありますね。何か共通点はありますか?
高見沢:ないですね。「彦」だけですね(笑)。
―THE ALFEEに通ずるエピソードもいくつか盛り込まれているようですが…。
高見沢:多少は入れていますけど、かなりデフォルメしている部分もあります。僕らはこのバンドのようにミーティングしたこともないですし、集まっては覚えたての麻雀ばかりしてましたからね(笑)。全然違いますね。