目の前の2人を逮捕せず、クリスタルを何とかして救ってやりたいという気持ちになった。
生後10か月になる子を含む4人の父であるホーレッツ警官は、妻と子供たちの写真をクリスタルに見せ、クリスタルの子供が誕生したら自分たち一家が引き取るという意思を伝えた。その言葉を聞いたクリスタルは驚いたが、ホーレッツ警官の目を見て本気であることがわかったという。
「彼は、警官である前にひとりの人間として私の子供のことを考えてくれたのです。」
妻レベッカさんに相談もせずに決断してしまったホーレッツ警官は、その後すぐに友人宅にいたレベッカさんを訪ねてこのことを伝えた。夫からクリスタルのありのままの状況を聞かされたレベッカさんは、ためらうことなく同意した。
世の中には、温かい家庭を求めている多くの子供が存在する。全ての子供を養子に迎えることはできないが、ホーレッツ夫妻は4番目の子供がもう少し成長すれば、将来養子を取ろうと常々話していた。若干時期が早まってしまったが、「仕事柄、助けたくてもどうにもできないという悔しい経験を何度もしてきました。でもクリスタルと会った時に、神が自分にできるチャンスを与えて下さったのだと思いました。それ以外に説明しようがありません」と言うホーレッツ警官同様、レベッカさんも「神から、『是非やってみなさい』というご指示を受けたのです」とすぐに養子を迎え入れる決意を口にした。
10月12日、クリスタルは女児を出産した。数日後にクリスタルから「どうかこの子をよろしくお願いします」と言われたレベッカさんは、「この子は私たちがしっかりと育てていきます。だからあなたもどうか自分の体を大切にして」と伝えると、クリスタルは我が子に別れを告げホーレッツ一家のもとを去った。
ホーレッツ一家により「ホープ」と名付けられた女児は薬物離脱症状が起こり、産まれてからしばらくは病院で治療を受けなければならなかったが、現在は治療を終え、ホーレッツ一家のもとでの生活に落ち着き始めたようだ。一方でクリスタルの現状は変わらずだという。後にクリスタルは、『CNN』の取材でこのように胸のうちを語っている。
「私は最低な人間で、最低な状況に身を置いているのだということは自分でもよくわかっています。こんな人生がどれだけハードなものであるかはきっと誰にもわからないでしょう。でもホープには成長した時に、私なりにあの子を愛していたからこそ産んだのだとわかってほしいと思っています。愛してくれる家族のもとで、安全な環境で落ち着いた生活を送ることがあの子にとって何より大切なことだけど、私はそれを与えてやることができなかった。だから手放すことが最善であったということを理解してほしい。将来あの子が望むなら、きちんと話をしたいと思います。そしてもしもあの子が、将来生みの親に会いたいと願ってくれるならば、『私と実父トム・キーはいつもあなたの人生にいる』ということを伝えたいと思っています。」
クリスタルがこれから人生を立て直すことは困難を極めるであろう。しかしホーレッツ警官は「どんな困難がクリスタルに降りかかろうとも、私たち家族は乗り越える方法を考え、彼女を支えていきます。そうすることで私も幸せを感じるのです」と語っている。このニュースを知った人からは「ホーレッツ警官も、妻のレベッカさんも現代の聖人君子だね」「天使のような夫婦だ。どうかホープちゃんが一家のもとで幸せになりますように」「なんて美しい話なの。愛と光をもたらしてくれるね」「ホープちゃんが、将来母親からの影響を受けて苦しみませんように」「こういう夫婦こそ、世界を救うんだね」といった声があがっている。
画像は『CNN 2017年12月3日付「Police officer adopts homeless mother’s opioid-addicted newborn」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)