万引きは犯罪と分かっていながらも、米ノースカロライナ州に暮らすある母親は子供たちを食べさせるためにそうするしか手段がなかった。しかし事情を知った警察官らが、彼女に救いの手を差し伸べた。「世の中、捨てたものではない」と思えるようなニュースが米メディア『WRAL』『The Herald Sun』などで伝えられた。
ノースカロライナ州ヒルズボロに暮らす3児の母テレッサ・ウエスト(44歳)は11月4日の朝、地元のスーパー「Food Lion(フード・ライオン)」で食パンを2斤、パスタとパスタソース、牛ひき肉パック、サラダ2パックにセロリ1本の総額36ドル(約4,000円)分の食料を万引きし、駐車場に停めてあった車に乗り込みその場を去った。
テレッサの万引きを見た従業員は、車のナンバーを控え警察に通報した。ヒルズボロ警察のキース・ブラッドショウ警官とキャンディース・スプレイジンズ警官はテレッサの自宅を訪れると、ある事情が明らかになった。
後の『The Herald Sun』の取材で、テレッサは警察の訪問を受けた時の恐怖を涙ながらにこのように話している。
「万引きで捕まることは分かっていました。警察官が家に来た時、怖くてたまりませんでした。私は刑務所に行くのだとも思いましたが、でもどうしようもなくてやけっぱちになっていたんです。」
テレッサから話を聞いた警察官2人は、テレッサが周りに救いを求めたがどうにもならず、子供たちと共に丸3日間何も口にしていないことを知った。テレッサの家の戸棚には万引きした食品以外は何も入っておらず、冷蔵庫にもチーズが少し残っているだけだったという。さらにテレッサは関節リウマチを患っており、車の事故で脳に損傷を受け、障がいがあるために仕事ができずにいることも分かった。
警察官らはテレッサに同情しながらも万引きの罪で逮捕、起訴することを説明し警察署に連れて行った。しかし生活事情が汲み取られ本人が逃げる心配はないとして、テレッサには500ドル(約56,000円)の保証金が設定されたものの釈放された。