アメリカで起こった黒人射殺事件、ISによる無差別テロ行為など人種や宗教、セクシュアリティなどを理由にその偏見や憎悪により引き起こされる暴力をヘイトクライムという。最近このヘイトクライムが世界中に蔓延しているといっても過言ではないといえよう。しかし、世の中嘆き悲しむことばかりでは決してない。このほどイタリアのローマから、ある警官のとった行動が孤独な老夫婦の心に温かい灯をともしたという話題が飛び込んできた。

誰かが誰かを傷つけるたびに、その悲しみは広がっていく。このほどイタリアのローマで、見知らぬ人のヘイトクライムのニュースを見て心を痛めていた老夫婦が感情のまま泣き叫んでしまい、驚いた近所の住民が警察へ通報した。

英紙『Metro』が報じたところによると、ローマ警察に「近所の老夫婦の部屋から泣き叫ぶ声が聞こえる」と通報があり、老夫婦のもとを4人の警官が訪れたという。すると出迎えたミケールさん（94）は「妻がテレビを見て悲しくて泣いてしまった」と説明。奥に入ると、ソファに座って泣いているジュールさん（84）の姿を見つけた。

「どうして世の中、こんなに多くのヘイトクライムが起こるのかわからない」とジュールさん。理不尽に憎しみ合う社会に悲しさが募ったのだろうか、感情が爆発してしまったのだ。高齢者ゆえに、健康面に問題がないか検査をした方がいいと警官は救急隊員を要請した。

驚くべきはその後の警官たちがとった行動であった。

救急車の到着を待っている間に、なんと警官たちはこの老夫婦に夕食の準備を申し出た。その様子はローマ警察のFacebook「Questura di Roma」にも投稿されており、この件に関して「ジュールさんとミケールさん夫婦は、社会にありがちな高齢者を騙す手口の犯罪に引っかかったわけでもなく、強盗に入られたわけでもない。誰も怪我をしておらず命を救うような事件ではなかったが、言葉を変えれば彼らはそれよりも難しい出来事に直面したといえる。彼らがあまりにも孤独に暮らしているということを知り、彼らを励まし、その顔に笑顔をもたらすことを業務として我々は全力を尽くした」といったメッセージが添えられてあった。

救急隊員が到着し、老夫婦の健康面に問題がないことが確認された。その後、警官たちとお喋りしながらの楽しい夕食を迎えることができたジュールさんとミケールさん。イタリアといえばパスタということで、Facebookには警官たちが作ったパスタ料理が老夫婦に振る舞われた写真が公開された。

「決して特別ではないが、パスタとチーズの夕食でも心を込めて料理をしたことだろう」と同僚の心遣いを思い遣るメッセージが添えられており、事件や犯罪を事務的に解決するだけではない人情味溢れるローマの警官たちの素晴らしさが伝えられている。

出典：http://metro.co.uk
（TechinsightJapan編集部　エリス鈴子）