何の罪も犯していないにもかかわらず、愛する我が子を奪われることほど悲しいものはない。米オレゴン州に住む両親が、知的障がいを抱えているという理由で児童保護サービスから子供2人を取り上げられ、親権を剥奪された悲しみを語った。『Inside Edition』『OregonLive.com』『The Independent』などが伝えている。
オレゴン州レドモンドに暮らすエイミー・ファブリーニさん(31歳)とエリック・ジーグラーさん(38歳)は、「子育てするには知能不足」と同州児童保護サービスに子供2人を取り上げられ親権を剥奪された。この4年間、2人はオレゴン州当局に「自分たちは子育てする能力がある」と主張し親権を取り戻すために闘い続けている。
児童保護サービスのケースワーカーは、エイミーさんとエリックさんの第1子であるクリストファー君(現在4歳)が誕生して4日目に「あなたたちの知り合いから通報があった。親として子育てする能力がなく、安全な環境を整えることさえできない」としてクリストファー君を里親のもとへと引き渡したのだ。
エイミーさんは当時、前の結婚で授かった双子(現在10歳)と実父レイモンドさん(74歳)と一緒に暮らしており、陣痛が起こるまでクリストファー君の妊娠に気付かなかった。もともと腎臓に問題を抱えていたエイミーさんは、腹部の痛みや不快感は腎臓の病が原因だと思っていたという。ところが突然の出産となってクリストファー君が産まれた。搬送先の病院では母子ともに健康で問題はなかったが、レイモンドさんは普段からエイミーさんと折り合いが悪く、双子に加えて新生児が同居することを嫌がった。そのためエイミーさんはクリストファー君を連れて、彼の父親であるエリックさんのもとへ引っ越した。
突然の出産で子育ての準備が全くできていなかったエイミーさんとエリックさんのもとを訪問した児童保護サービススタッフは、「子供が欲しているサインを読み取ることができず、父親は床にいるクリストファー君を押し潰しそうになった」と主張し、クリストファー君を2人から取り上げた。さらに双子の親権までも奪い、彼らの父親のもとへと引き渡した。
今年初め、エイミーさんは再び新たな命を授かった。今回は出産前に必要な物を買い揃えており、子育てには万全の準備が整えられてあった。しかし児童保護サービススタッフは病院を訪れ、産まれて間もないハンター君(現在8か月)をエイミーさんから引き離し、クリストファー君と同じ里親のもとへ預けた。
エイミーさんとエリックさんはともに高卒で、エリックさんはADD(注意欠陥障がい)の診断を受け障がい者手当を受給している。また2人は当局からIQ検査を受けさせられたが、平均IQ値が90~110であるのに対し、エイミーさんは72、エリックさんは66しかなかった。政府当局の報告によると、アメリカでは知的障がいを持つ80%の親が子供の親権を剥奪されているという。2人が裁判所の許可を得てクリストファー君のもとを訪れる際に監視役となり、また現在は2人の代弁者としてサポートしているシャーリーン・ハーゲンバハさんはこのように話している。
「私は仕事柄、薬物関連で逮捕、起訴され刑務所から戻ってきた親が、自分の子供を取り戻した後定住する家もなく、学校にも行かせられないという酷いケースを目にしてきました。ですがエイミーさんとエリックさんには、子供たちへの虐待や育児放棄などは一切見られません。それなのに児童保護サービスは、親になるチャンスを与えず、2人をサポートするためのネットワークを築くこともないまま、さっさと子供を取り上げたのです。2人はクリストファー君の誕生後、確かに子育ての準備は整ってはいませんでしたが、だからといってクリストファー君が両親と住むべきではないという理由にはならないはずです。」