人形を愛しそうに「私の子」と呼び、抱きしめている老女。第三者が故意にその人形を奪い、本人の心に深刻なダメージを与え、訴えられた場合、損害賠償および慰謝料はどれほどのものになるのか。このほどロンドンの王立裁判所(Royal Courts of Justice)で裁判が結審した。
その女性は英ウェスト・ミッドランズ在住のスーザン・ヒアシーさん(64)。重い知的障がいが認められているスーザンさんは、2013年9月に「Walsall Manor Hospital」という医療施設を利用した。人形を「わが子」と呼び、常に抱きしめていた彼女は、看護師の指示にうまく従うことができなかった。そのスーザンさんに対し腹を立てた1人の看護師が、スーザンさんから人形を取り上げると、人形の手を抜き足を傷つけ、髪の毛をカットして床に放り捨ててしまったという。
病院は謝罪するとともに新しい人形を購入したいと申し出たが、スーザンさんの悲しみや嘆きはおさまらず、スーザンさんの姉であるジェーン・ダンさんが妹に代わって提訴を決意。看護師と病院に対する指導や監督が不十分であるとして、国営医療サービス事業である「国民保健サービス(National Health Service、以下NHS)」に損害賠償を求めたのであった。このほどその裁判が結審し、スーザンさん側が勝訴。NHSは1300万円弱の損害賠償を支払うよう命じられた。人形とはいえスーザンさんにとっては心の支えであり、その存在価値は何ものにも代えがたいものであったことが認められたという。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)