英ロンドン西部で今年5月に起きていた33歳の女性に対する殺人未遂事件。ジョギングしていた男が正面から歩いてきた女性にぶつかり、バスが近づいていることを承知の上で車道に突き飛ばしたというもので、この事件についてはテックインサイトでもお伝えしたばかりであった。捜査は暗礁に乗り上げたとして警察はこのほど市民に情報提供の協力を呼び掛けていたが、どうやらその判断は正しかったようだ。
テムズ川にかかるパットニー橋の歩道で5月5日の朝、東から西に向かってジョギングしていた男が西の方から歩いてきた33歳の女性(氏名などは明らかにされず)にぶつかり、その体を車道の方向に突き飛ばすという事件が発生した。女性は尻もちをついて胸部から上が車道に飛び出したが、バスの運転手がとっさにハンドルを切ったことから幸いにも軽傷で済んでいた。監視カメラが一部始終を捉えていたが男は知らん顔で再びジョギングに戻っており、悪意があったことは明白。ロンドン・メトロポリタン警察はすぐにこの男の行方を追っていた。
容疑者は30代前半から半ばの白人の男で瞳と短めの毛髪はブラウンと特定されたが、3か月が過ぎてもその身柄を拘束することができず、警察はついに監視カメラが捉えていた30秒ほどの映像と男の拡大写真を公開し、市民からの情報提供を呼び掛けた。それから間もなくという8月10日、警察はロンドン南西のチェルシー地区で41歳の男(50歳とするメディアも)を事件の容疑者として逮捕したことを発表。「市民からの情報提供のおかげです」と感謝を述べた。
その後の状況を確認するためか、15分後にはぬけぬけとその橋に戻ってきたその男。職業と犯罪の関係を研究している心理学博士のクレイグ・ジャクソン氏は朝の人気情報番組『Good Morning Britain』の取材に「はっきりと言えるのは、この男は“自分はほかの誰よりも重要で大きな価値のある人間”などと信じこんでいるタイプの人間だということです。正面衝突を怖がり先にハンドルを切った方が臆病者とされる“チキンゲーム(日本ではチキンレースとも)”というものがありますが、彼はその勝者となることにこだわります。自分の方から譲るということが出来ない性格なのです」と述べた。その歪んだ思考回路が高じた一瞬の凶行であったというのである。