地下鉄に乗るため階段を下りている最中に、後ろから暴漢が現れて背中を強く蹴られ、階段を転落するなどという恐ろしい状況を誰が想像するであろうか。非常に暴力的で忌まわしい事件がドイツ・ベルリンの地下鉄駅で起きていたが、裁判所は被告に求刑よりはるかに軽い刑罰を言い渡したもようだ。『THE LOCAL de』 『SPIEGEL ONLINE』ほかが伝えている。
ベルリンの「ヘルマンシュトラーセ(Hermannstrasse=Hermannstraße)」というU-Bahn(地下鉄)駅で昨年10月、階段を下りていた26歳の女性が見ず知らずの男に背後から蹴飛ばされて負傷するという事件が発生していた。ジーンズに黒の革ジャンを着用し、片手にはビールのボトル、もう片方の手でタバコを吸っていた犯人。その一部始終を上部の防犯カメラが捉えており、ベルリン警察はスヴェトスラフ・Sという28歳のブルガリア人の男を逮捕した。このほどその裁判が行われ、スヴェトスラフ被告には懲役2年11か月の実刑判決が言い渡されたという。
事件の後、ベルリン警察は防犯カメラの映像を公開して犯人についての情報提供の協力を市民に呼び掛けていた。それを確認すると蹴られた女性の体は宙に浮き、数メートル先の踊り場にほぼ真っ逆さまに落下。顔と肩から沈んでいることがわかる。また男は仲間とみられる男数名とともに何事もなかったかのように再び地上の方向へと引き返し、踊り場付近にいた数名が女性のもとに駆け寄り手を差し伸べたようだ。
事件当日はアルコールを飲み、大量のマリファナに加え、コカインとメタンフェタミン(覚醒剤)をやっていたと警察に話した被告。裁判においても「私が女性を蹴ったことは認めますが、実は記憶がありません。防犯カメラの映像を見せられて愕然とし、そんなことをした自分自身がただ恐ろしくなりました」と述べている。家庭では3人の子を持つ父親であったが、その日の夕方、嫉妬が原因でうるさく電話をかけてきた妻と喧嘩になり、兄からも干渉も受けてむしゃくしゃしていたことを明らかにしている。