米アラスカ州の4児の母が、このほどパートナーと結婚式を挙げた。しかし祝福の声に満たされた場に愛する息子の姿はなかった。その代わり、2年前に事故で他界した息子の心臓を移植された青年がサプライズゲストで登場し、花嫁を含む周囲の人々を感動の涙で包んだ。米メディア『Today』や『NBC New York』などが伝えている。
アラスカ州ワシラに暮らすベッキー・ターニーさん(40歳)は、パートナーのケリーさん(44歳)と仕事を通して7年前に知り合った。互いに結婚歴があったが、ベッキーさんは4人の子供たちと共にケリーさんと幸せな家庭を築いていた。しかし彼女にとって唯一の息子だったトリストン君(19歳)が、2015年10月に銃による不慮の事故で他界するという悲劇に見舞われてしまった。当時、トリストン君の臓器は5人の患者に移植されその命を救った。
7月7日、ベッキーさんとケリーさんは結婚式を挙げることになったが、姿はなくとも愛する息子の心に寄り添うことは2人の願いだったのだろう、親族が座る席の一つは亡き息子のために空けられてあった。
ベッキーさんとケリーさんは途中までごく普通に式を進めていたが、ケリーさんが突然トリストン君のことを語り出した。その直後、トリストン君の心臓を提供されたジェイコブ・キルビーさん(21歳)が目の前に現れ、ベッキーさんは思わぬサプライズを受けることとなった。実はジェイコブさん、花婿の付添人として式に参加していたのだ。
カリフォルニア州サンディエゴに住むジェイコブさんは「左心低形成症候群」という先天性心疾患で生まれ、2歳で一度目の心臓移植手術を受けた。しかしその心臓の機能が低下し、2年前に発作を起こしたため再び移植待ち状態だったそうだ。
2015年10月21日、ジェイコブさんにトリストン君の心臓を移植する手術が行われ無事成功、現在はすっかり元気になりサーフィンやジム通いもしているという。普通の生活ができるようになったことは移植提供者があってこそとジェイコブさんは感謝しながら、これまでベッキーさんと何度かFacebookや電話でやり取りをし、関係を深めてきた。今年の初めにも、40歳を迎えたベッキーさんにジェイコブさんは電話でお祝いの言葉を送っている。しかし、これまで一度も会ったことはなかった。そこで今回、ケリーさんはジェイコブさんとサプライズを計画、周りのゲストもそれを知っていたがベッキーさんだけが知らず、ジェイコブさんが突然式場に現れた時、ベッキーさんの目には涙が溢れた。
ジェイコブさんから「息子さんの心臓の音を聞いてみますか」と訊ねられて聴診器をあてたベッキーさんは、彼の胸で力強く打つ愛息の心臓音を聞き「トリストンの心臓だわ! 素晴らしいわ!」と歓喜の声をあげた。