またザハラさんはドーハで乗継便へと移動し、そこで男性CAに事情を告げるとチーフパーサーのもとへ連れていかれた。治療のためのクリームをもらったが、他の搭乗者の目の前でシャツを持ち上げ患部を見せるように指示されるなど、大変な屈辱感を味わったそうだ。彼女の弁護士も、メディアの取材に「ザハラさんの腹部には15×6cmの跡が残り、皮膚は変色しました。乗客に熱傷を負わせておきながら、彼らがしたことといえばクリームを塗って『衣服が患部にくっつかないよう注意を』と告げる、たったそれだけですよ」と怒りをあらわにしている。またパスポートも重要な部分がコーヒーをかぶってしまい、入国管理当局から2時間にわたり厳しく問い詰められたという。
このような理由からカタール航空を訴えたザハラさん。懲罰的損害賠償35万ドルを含む賠償金85万ドル(1憶円弱)を求めたいと鼻息を荒くしているが、一方のカタール航空側は彼女の主張を否定。「CAはコーヒーを膝にこぼしたといい、知らん顔をしたわけではない。感情的になり始めたザハラさんに落ち着いてもらうため、あえてその場を離れたと聞いている」と反論している。
たとえば泥酔したり怒鳴るなど乗客が騒ぎ始めたりすると、特に深夜のフライトでは静かに眠りたいほかの乗客のことも考え、早い鎮静化のためにCAは毅然とした態度を取り、あえて無視することが時には必要となる。記者も何度かカタール航空を利用したが、CAの印象はとても良い。しかし乗客が怪我や痛みを負ったとなれば事情は異なる。無視されたみじめさが激しい怒りに転じたケースと言えそうだ。
なお、2015年にはある男性がドーハからケープタウンに向かったカタール航空のフライトで機内にいたクモに右脚の脛を噛まれた。皮膚が壊死して南アフリカの病院で移植を伴う大がかりな外科手術を受け、入院は1か月にも及んだ。男性は「乗務員や清掃担当者の職務怠慢が原因」としてカタール航空に損害賠償を求める訴えを起こしたが、当日は深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)を疑って鎮痛剤のみで過ごし、医師のもとを訪ねたのが翌日と遅かったことからカタール航空は「こちらに落ち度はない」と反論していた。
出典:http://pilotonline.com
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)