米オハイオ州のクリーブランドにて、元気に過ごしていた7歳のメロディーちゃんが突然の喘息発作を起こし、窒息状態に陥ったのは2015年7月7日のことであった。
看護師をしている母親のアンバー・トラヴァグリオさんはすぐに救急車を要請し、自らCPR(心肺蘇生法)を試みた。しかし地元の小児病院へ送られたメロディーちゃんが目を覚ますことはなく、9日に帰らぬ人となってしまった。
子供を亡くすことほど親にとって辛いことはない。アンバーさんは「病室で横たわる娘の手を握りしめながら、ただ名前を呼んで泣き叫んでいました。起こっている出来事が現実には思えませんでした」と当時を振り返り、辛い心境を語っている。
しかし「愛する娘が生きていた証をどこかに残したい」と思ったアンバーさんは、悲しみの中でメロディーちゃんの臓器を提供することを決意した。実はメロディーちゃんが亡くなった9日、約1,130キロ離れたジョージア州アトランタのある病院で一人の女児が4歳の誕生日を迎えていた。
ペイトン・リチャードソンちゃんは、風邪を引いたことが原因でウイルスが心臓に入り込み病院で治療中だった。心臓の動きを保つために機械を用いらなければならないほど重篤な状態に陥っており、母のアシュリンさんは医師から「生存率は3%」と告げられていたという。
そんな娘に朗報が届いた。アシュリンさんは娘に適合する心臓が見つかった喜びと同時に、幼い子供を亡くした見知らぬ母のことを想い泣いた。「愛する娘を救いたい」そう思ったアシュリンさんは娘のために臓器移植を決めた。
摘出された心臓を運ぶには時間の限界がある。クリーブランドからアトランタまで心臓を搬送するのにかかる時間は4時間。しかし臓器調達機関「Lifebanc」は、年齢やサイズなど完璧にペイトンちゃんの心臓に適合したメロディーちゃんの心臓をなんとしてでも無事に届けたいと限界にチャレンジした。
そして手術から1年7か月が経った今月8日、アンバーさんは移植手術が無事成功したペイトンちゃんとその家族に会うためにアトランタを訪れた。初めて会った瞬間、アンバーさんとアシュリンさんは抱き合い号泣したという。
亡き娘の心臓を移植され、現在回復状態にあるペイトンちゃんの元気そうな姿を見てアンバーさんは感動し、その後Facebookに以下のように綴っている。
「2人の美しい少女の中に完璧な心臓が存在しています。亡くなった私の娘の分まで、あなたは、あなたのお子さんをどうかしっかりハグしてあげてください。たくさん本を読んだり歌を歌ったりしてあげてください。そしていつも新しい思い出をお子さんと作ってください。」
臓器提供は大きな勇気と決断のいる行為だ。しかしアンバーさんとアシュリンさんは、臓器提供で救われる命の大切さを社会にもっと知ってもらいたいと話している。なお昨年12月には、事故で命を落とした22歳の男性の遺族が、息子の臓器提供を願い出たことで約50人の命が救われたニュースも伝えられた。
出典:http://ktla.com
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)