19日付の“「カップ麺の容器は人体に悪影響」と米医療研究チームが改めて指摘”との記事をご覧いただいた方も多いと思う。そちらでは主に、油脂や塩分の多さゆえカップ麺を含むインスタントラーメン党はメタボリック症候群と無縁ではいられないことに触れたが、続いては若い世代に向けて鳴らすべき警鐘として、カップ麺の容器からごく微量ずつ溶け出す環境ホルモンの怖さについて触れていきたい。
全米のもっとも優れた病院のひとつ、『メイヨー・クリニック(本部はミネソタ州)』がこのほどカップ麺を含むインスタント麺の多食と各種疾患の発病率を調査し、心臓病、脳卒中、糖尿病などメタボリック症候群を引き起こす確率は想像以上に高く、特に女性においては週に2度でも危険度大と発表した。ウエスト回りになんら問題のない若い世代には、この話はそう危機感をもたらさなかったかもしれない。
だが続いて紹介するのは、テキサス州「ベイラー・ハート・アンド・バスキュラー病院(Baylor Heart and Vascular Hospital)の医学博士、Hyun Joon Shin氏が説明する内分泌かく乱物質(環境ホルモン)とされる化学物質の危険性について。熱湯を注ぐことによりカップ麺からわずかながら溶け出してしまう「ビスフェノールA」とポリスチレン成分である「スチレン(ダイマーとトリマー)」の怖さを、若い世代や未来あるお子さんを育てていらっしゃるご家庭にどうか知っていただきたい。内分泌かく乱物質が私たちの体内に溜まると、視床下部、脳下垂体、甲状腺、すい臓、副腎、精巣や卵巣などから分泌され、一定量のバランスがとられているはずの、たとえば成長ホルモンや甲状腺ホルモン、男性・女性ホルモンといった各種ホルモンを失調させる可能性がある。野生動物やヒトにおける生殖腺や甲状腺の機能異常、オスの精子の減少やメス化、妊娠率の低下はすでに大きな問題となっており、その影響は次の世代にまで及ぶとも指摘されている。
前記事との重複となるが、日本では発砲スチロール容器のカップ麺に熱湯を注ぐことでの内分泌かく乱物質溶出の危険性を指摘されながら、2000年に当時の通産省と環境庁が「証拠不十分」としていた。しかし2004年にはエゴマ油を入れて100度の熱湯を注ぐとカップ麺の容器が溶け出すことが確認され、2006年には東京都健康安全研究センターが「動物実験を経て環境ホルモン作用が認められた」と発表した。「ビスフェノールA」は環境ホルモン作用の危険度で示せば、限りなくブラックに近いグレーという位置づけであり、未来ある子供たちにカップ麺を食べさせる場合は、せめて安全な器に変えてから熱湯を注ぐようにしたいものである。
なお私たちの日常生活において無縁ではないとたびたび話題になるのは、ダイオキシンほかポリ塩化ビフェニル類、ビスフェノールA、フタル酸エステルなどだが、農薬、殺虫剤、工業製品、金属などさまざまなところで数十もの化学物質が環境ホルモン作用を持つと疑われており、生産中止となるのは膨大なデータをもとにクロと判明したものだけだ。学校給食に使われてきたプラスチックの食器についても、ポリプロピレンからは酸化防止剤BHTが、メラミンからはホルムアルデヒドが、そしてポリカーボネートからはビスフェノールAが溶け出すと次々と問題が続出し、強化磁器など安全なものの使用を望む声は高まる一方である。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)