勤勉な人の目に、携帯電話を持ってトイレに入ったままなかなか出てこない同僚というのは迷惑なもの。それが度々になっている部下に対し、上司が“真面目に働け”とにらむことを「ハラスメントの一種だ」という声もある今、米シカゴのとあるメーカーの工場がそんな従業員に対して厳しい処罰を下し、話題となっている。
米イリノイ州シカゴにある、水道栓メーカー「WaterSaver Faucet」社の工場。度々トイレに通い、個室から長時間出てこないことを「どうせ携帯電話の使用であろう」と疑われた従業員19名が、このほど解雇を言い渡された。「お腹の調子が悪かった」、「プライバシーの侵害だ」、「携帯電話の使用だという証拠はあるのか」。だが、従業員のこんな訴えを会社が聞き入れることはなかった。
写真はその工場の従業員をはじめとする地元の労働組合員らが、“トイレ・ハラスメントをやめろ!”というプラカードを手にデモを行っている様子(画像はmoney.cnn.comのスクリーンショット)だ。彼らは全国労働関係委員会(National Labor Relations Board)を通じて不服を申し立てているが、同社のCEOスティーヴ・カーステン氏は、雇用者としてのこのたびの決断をこう説明している。
「トイレでの携帯電話の使用という問題に関しては、いきなりの処罰ではなく3ステップで従業員の理解を得てきました。昼の1時間の休憩でそうした用事を済ませている真面目な従業員も多いからです。昨年の冬にはカードをスライドさせてトイレに入るシステムを導入し、誰がどれくらいトイレを使用したか、証拠も出せます。今年5月の使用状況を見て、10日間につき休憩時間以外に60分以上をトイレで過ごしていた従業員を解雇としました。これは報酬を不正に得ているのと同じで、こちらとしては計120時間分の労働力のロスがあったことになります」とカーステン氏は主張している。
一方で同社は、勤勉な従業員に対しギフトカード(1日につき1ドル、毎月最大で20ドル)の褒美を用意している。「その日、休憩時間以外に全くトイレに行かなければ」と条件が過酷なわりに1日1ドルとずいぶん安いが、もしもこれが5ドルであったら褒美欲しさに尿意を我慢して体を壊す従業員が現れることも想定されるため、安易につり上げるのも考えものだ。従業員全体のモラルの底上げを図りたいとする雇用者にとって、今一番の悩みの種とも言われているトイレでの携帯電話の使用。真面目な従業員を正しく評価していくためにも、多くの企業がこの一件に関して大きな注目を払っているもようだ。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)