億万長者のただの気まぐれか。それとも世界のトップ・ベンチャーキャピタリストとして社会をけん引してきた上に、政治家としての才能もあったということか。米カリフォルニア州6分割案を打ち出しているティム・ドレイパー氏が、今また大きく前進したもようだ。
Hotmail、Twitter、Skypeなどに次々と投資しては大成功を収めてきたシリコンバレー界の超大物ベンチャーキャピタリスト、ティム・ドレイパー氏が今、全力投球しているのはなんと米カリフォルニア州を6つに分割し、それぞれの個性をいかした政治をしてもらおうという“Six Californias”計画。絶対にやる価値があると熱い演説を繰り広げてきた彼が目指したのは、100万人の署名を集めることで、政治家に任せず自分たち州民で決定できる「州民投票」に持ちこむことであった。
この分割案がカリフォルニア州民に知れ渡ったのは昨年12月のこと。賛否両論もう喧々諤々となり、演説やインタビュー、記者会見が続く中で同氏が一貫して訴えてきたのは、人口3800万人超、シリコンバレーが代表する半導体やコンピューター産業、ハリウッドをはじめとするショービジネス、芸術、有名大学、観光産業、優れた人材、富、名誉、そんなもののすべてが揃い、しかし地域ごとにまるでカラーが異なる広大なカリフォルニア(アラスカ、テキサスについで面積は全米第3位)を、1つの州として統治することはもはや困難だということ。州の傘下としなくても、力や特色を発揮できる郡だらけだとした。
ドレイパー氏はカラフルな図(画像はusatoday.comのスクリーンショット)でその具体的な分割案を示している。北から順にジェファーソン(水色)、北カリフォルニア(紫)、シリコンバレー(黄)、中央カリフォルニア(赤)、西カリフォルニア(緑)、南カリフォルニア(橙)となる。実現すればそれぞれに新たな旗が設けられ、連邦議会の議員は10名増加。ただしジェファーソンに共和党支持者が集まるものの、シリコンバレー、西・南カリフォルニアは民主党が圧倒的に強くなる。州が5つ増えることで全米における両党間のバランスが崩れることは必至だ。
そして半年が過ぎ、ドレイパー氏は今週ついに130万人の署名を集めてサクラメントの州議会に提出。州民投票は2年後の2016年11月に行われる見込みだ。「カリフォルニア州6分割案はもはや青写真ではなくなった」と推進派は非常に熱くなっているが、州民投票で勝利をおさめたとしても、実現には複雑な手続きが山積みとなる。必要経費は自腹を切り、富豪の支援者らからの寄付で賄えると強気のドレイパー氏だが、5つもの州がいきなり誕生したら、知事選の準備から役所の書類一通に至るまで大混乱。州立の既存の法的機関、研究機関、刑務所、教育機関、もうありとあらゆる機関が名義の刷新を迫られ、新たなハコモノが必要となり、道路、交通機関、河川などの管理や整備に混乱が生じる可能性も高い。2年などあっという間のこと、可決した場合に備えて役所の人々は今からその準備で戦々恐々といったところではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)