健康長寿の秘訣はポリフェノール摂取、フレンチパラドックス、そんな言葉のもと日本でも赤ワインは健康に良いとして俄然大人気になっていった。しかしこのほど米国で、それを否定せざるを得ない調査結果が発表され、業界やワイン愛好家をがっかりさせている。
そこに含まれているブドウの果皮由来のポリフェノール、レスベラトロールにより赤ワインをよく飲むフランス人は高タンパク質、高脂質の食生活を送っているも心疾患ほか成人病の発症率が低い。これを「フレンチパラドックス」と呼び、世界中に赤ワイン愛好家が急増し、ポリフェノールであるレスベラトロールはサプリメントとして商品化された。ところが数年前から「ポリフェノール摂取と健康長寿に因果関係はない」との説を唱える専門家が次々と現れ、このほど米ジョンズ・ホプキンス大学医学部のリチャード・センバ博士が、「赤ワインにあなたを心臓病から救うほどの力はない」との調査結果を医学専門誌『JAMA Internal Medicine』電子版に発表。「フレンチパラドックスはただの都市伝説」という意見がまたひとつ増えてしまった。
調査はイタリア・キャンティ地方の2つの村で、65歳以上の約800人を対象に1998年から2009年まで行われ、食生活と尿中のレスベラトロール値を確認しながら健康状態を観察していった。するとその期間中に34.3%にあたる268人が死亡し、27.2%にあたる174人の心臓に疾患が見つかり、4.6%にあたる34人がガンを発症。レスベラトロール値の最低の人が「心臓の状態が最も健康」と診断されるなど、赤ワイン・ポリフェノールの摂取量と健康長寿の因果関係はまったく確認できなかったという。
博士が改めて強調しているのは、このあたりの食文化には根底に地中海ダイエットに代表される健康的な食材が豊富にあるということ。地中海周辺の国々は魚介類に恵まれ、温暖な気候と質の良い土壌を武器に豆類、果物、野菜が非常に豊富で、ビタミンやミネラルが十分に摂取できているため、脳卒中や心臓病による死亡率が低い。長年の大量飲酒は肝臓や脳に大きなダメージとなることもあり、他の国の人々が「赤ワインを飲めば心臓病を防げる」と安易に誤解してならないのはこうした理由からだそうだ。ただし成人であれば、毎日適量の飲酒は健康的メリットが多いとして奨励されることも多く、ポリフェノール効果を信じて渋みの効いた赤ワインを好む人々は、そもそもが健康志向でタバコを吸わずバランスのとれた食事を心がけていることも多い。それはおおいに結構なことであり、そこに定期的な有酸素運動を加えるとさらなる相乗効果が期待できるそうだ。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)