南アジアのパキスタンにいても国際ニュースを知りたいとして、『インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ』紙を愛読していた人々は本当にビックリした。なんと先週末、紙面トップの本当に重要なニュースを伝えるべき部分が真っ白であったのだ。
「アルカーイダ」の指導者で、「9.11アメリカ同時多発テロ事件」ほか多数のテロ事件の首謀者とされるウサーマ・ビン・ラーディンは、長くパキスタン北西部の家屋にかくまわれた後、2011年5月2日に米国海軍特殊部隊との銃撃戦の末に殺害されたことが報じられた。その後もイスラム原理主義運動「タリバン」の勢力が強く、パキスタンはアフガニスタンと並ぶ反米国家である。
そのパキスタンで先の週末、『インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ』紙を手に取った人々は驚いた。なんと一番重要な記事を掲載すべき部分がすっぽりと抜けているのだ。この写真はいずれもTwitterに投稿されたもの。パキスタン人には知らせたくないニュースがここに書かれていたのだろう、と察するパキスタン在住の人々。Twitterを通じてこの状況が世界に発信されると、他国からは“その部分はウサーマ・ビン・ラーディン関連の記事だよ”との情報がすぐに寄せられた。
その記事のタイトルは“What Pakistan Knew About Bin Laden(パキスタンがビン・ラーディンについて知っていたこと)”。長くアフガニスタンとパキスタンを担当していた同紙のジャーナリスト、カーロッタ・ゴール氏が執筆して間もなく発売となる著書を紹介するもので、パキスタン政府諜報機関の「軍統合情報部(ISI:Inter-Services Intelligence)」はビン・ラディンの潜伏先を把握し、かくまって物資援助を続けていた可能性があるという内容だ。
紙面トップに大きな空白が生じてしまったことについて、『ニューヨーク・タイムズ』紙本部の広報担当者は『ブルームバーグ』に、「パキスタンでの印刷業務はあちらの主要紙『The Express Tribune』に委託している状況で、彼らの一存でこうなってしまったのでしょう。大変遺憾な出来事です」と説明している。ただし「パキスタンで私どもの新聞を発行することへの重圧がどのようなものか、それは十分に理解しています」とビジネスパートナーを気遣った。この日に印刷された部数は約9,000とのこと。ただし当日も、オンラインでその記事を閲覧することは可能であったそうだ。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)