このほどある学術誌に、「チーズと肉を摂り過ぎていると早死にしますよ」という調査結果を伝える論文が発表された。アメリカの多数のメディアがこれを流したところ、チーズバーガーが大好きな国民だけに、あちこちで喧々囂々の議論が展開されている。
日常的に多くのチーズや肉を摂り過ぎると、50代や60代前半で命を落とす可能性が高くなる―こんな恐ろしい論文がこのほど米学術誌「Cell Metabolism」に発表された。動物性タンパク質の摂取量と病気の関連性については長年様々な研究がなされてきたが、“チーズと肉を使用した料理”と限定されたものも珍しいとして話題を呼んでいる。
調査を行ったのは南カリフォルニア大学長寿研究所の所長で、植物性食品由来の代替食を作る会社の設立者でもあるヴァルター・D・ロンゴ博士。対象となったのはアメリカ在住の50歳から65歳の6,000人以上の成人で、食生活で動物性より植物性タンパク質を重視している人々は明らかに長命であり、日常的にたくさんの動物性タンパク質を摂っている人々の74%が65歳以前になんらかの病気で死亡。ガンが原因の死亡率も前者よりなんと4倍も高いことが判明したそうだ。植物性タンパク質はナッツや豆から摂取する人が多いという。
興味深いのは、こうした差が顕著なのは65歳までとのこと。それより高齢になると、たとえ動物性でもタンパク質の摂取量が多い人の方が少ない人より25%ほど長命であることが分かったという。つまり動物性タンパク質の安全な摂取量を知り、65歳まではできるだけ植物性タンパク質を摂る。そして65歳からは動物性、植物性にかかわらずタンパク質を多く摂ることを心がけることが大事だそうだ。これをせずに骨格筋の量や力が低下すると高血圧や糖尿病、転倒や寝たきりになりやすい「サルコペニア」を発症してしまうといい、アメリカでは80代の約半数がこの状態にあるという。
ちなみにこの発表については、米ABCの朝の番組『Good Morning America』も専門家を招いて大きく取り上げた。そこで提唱されたのは「地中海ダイエットに象徴されるような植物性タンパク質、野菜、果物、食物繊維をたっぷりと摂取し、肉なら赤身を摂るよう心がけましょう」ということ。すっかり悪者にされてしまった感のあるチーズと肉については、これらの食品にも優れた栄養素が多く含まれていることから、例えば肉料理にはチーズでなく無脂肪のヨーグルトをあわせるなど、節度とバランスを考えればよいということに落ち着いたようだ。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)