雪の降る冷えきった米ニューヨーク州でこのほど、あるトレーラーハウスで火災が起きた。勇敢にも親類の命を次々と救ったのは8歳の男の子。しかし身障者のおじを救うことは叶わず、共に焼死した。人々はこの少年の勇気と行動力に心を打たれ、憐れみの涙を流している。
米ニューヨーク州北西部のペンフィールドで、トレーラーハウスで暮らしていたあるファミリー。しかし今月20日朝5時頃、トレーラーは激しい火災に見舞われてしまった。消防局が消火活動を終えて現場から発見したのは、身体に障がいを持ったスティーヴ・スミスさんと、彼を救い出そうと果敢に炎の中に入って行ったまま戻らなかった甥のタイラー・ドーハンくん。そしてスティーヴさんの父親で、タイラーくんには祖父にあたるルイス・ビーチさん。3人の変わり果てた姿であった。
地元メディアの『Democrat&Chronicle』が伝えているところによれば、火災が発生した時にトレーラーにいたのは9人で全員が眠っていた。最初に火の気を察したのは8歳のタイラーくん。この子は祖母、おば、4歳と6歳のいとこを次々と揺り起こし、手を差し伸べながらひとりずつトレーラーの外へと誘導した。こうして6名の命を救ったタイラーくんだが、トレーラーに残っていた車椅子使用者のおじのスティーヴさんを救うことは叶わず、そのベッドの近くで共に遺体となって発見された。飼われていた猫、犬らも焼死していることから炎は非常に速く広がったもようだ。
タイラーくんはこのトレーラーハウスの住民ではない。その日は「マーチン・ルーサー・キング・ジュニア・デー(毎年1月の第3月曜日)」で学校が休みであったため、祖父に会いに来ていたという。タイラーくんのおじの1人であるジョゼフ・バリエットさんは、「親類をひとり救い出すと、タイラーは再び炎の中に戻って行ったそうです。幼い少年にそれほどまでのガッツがあるとは…。こんなに素晴らしい子はめったにいません」と話し、がっくりと肩を落とした。
8歳にして尊い命を落としてしまったタイラーくん。この子が通っていた学校があるイースト・ロチェスター・セントラル学区は、「タイラーくんは真の英雄です。その的確な判断力と勇気あふれる行動は私達にたくさんのことを学ばせてくれました」と称えた。またペンフィールド消防署長のクリス・エブミーヤー氏は『USA Today』に、「もしもタイラーくんがいなければ焼死者の数はもっと増えていたはずです。自分の命を惜しまずに救助活動を続けたことを心から称えたいと思います」と話した。なんという家族愛、しかしあまりにも悲しい事件である。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)