今年10月、大きな騒ぎとなった、米ラスベガスの「サマーリン病院で結核の集団感染か」というニュース。同病院をある時期に利用していた人々に広く検査が呼びかけられたが、なんと現時点で60人近くの保菌者が確認されている。日本と同様に、アメリカでも「結核は過去の病気」と言っていられなくなったようだ。
今年8月、米ネバダ州ラスベガスにある「サマーリン病院(Summerlin Hospital Medical Center)」が、そこである時期に誕生した新生児のうちの140人について、「赤ちゃんとそのご家族には結核菌に感染した可能性があり、検査が必要です」との手紙を各家庭に送り、大変な騒ぎとなった。あれから4か月、検査により保菌者の数はジワジワと増えている。アメリカでは長年にわたり結核の罹患率が低かっただけに人々のショックは大きい。
事の発端は、5月にヴァネッサ・ホワイトさんという当時25歳の女性がサマーリン病院で双子を出産したことにある。未熟児であった双子は6月と8月に次々と死亡し、母親のヴァネッサ・ホワイトさんもカリフォルニア州の病院に転院したが7月に死亡。そこで初めて結核に感染していたことが判明した。サマーリン病院の新生児集中治療室を中心に集団感染があった可能性が指摘され、同時期にそこを利用していた赤ちゃんとその家族、医療従事者ら数百人への検査が呼びかけられたのであった。
検査についてラスベガスの保健機関「Southern Nevada Health District(以下SNHD)」は、新生児は免疫システムが確立していないことから、正しい検査結果が得られない可能性があると説明してきた一方で、今月23日にはすでに54人の陽性反応が確認されたことを発表した。またSNHDは、今後多くの医療機関で「結核患者は増加する。抗生物質をひと通り試して効かなければ結核を疑う」といった意識改革が必要になると強調。診療時のマスク、手袋、防護衣の着用といった適切な予防策を今一度確認し、訪問者のマスク着用を義務付けるなど方針の改定を迫られそうだ。
結核菌は空気感染(飛沫感染)でうつる病気であり、たとえ感染しても初期には症状が無いことから気づきにくい。さらには、医師から「当院で結核患者が発生」という届け出が保健機関になされ、そこで初めて「感染症サーベイランス」としての情報提供や感染予防の活動が始まるため、感染から発病、あるいは検査で保菌者と診断されるまでの長い空白の期間にも感染者を増やしてしまうことが問題となる。
ちなみにヴァネッサさんの夫ルーベン・ホワイトさんは11月、弁護士を通じて「妻は長引く咳と熱、せん妄症状でサマーリン病院の緊急治療室に三度も運ばれた。一度でも結核の検査を行ってくれていれば、妻や子は死なずに済んだのではないか」として、同病院および担当した医師らを訴える意思があることを発表。医療従事者や当時の入院、外来患者、訪問者なども連名で同病院を訴える構えを見せている。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)