火星の表面を走るNASAの無人探査車が、その表面に大昔には湖が存在した形跡をこのほど発見し、「過去には水があり、生命が宿る環境が整っていた」という近年の学説を確固たるものにした。
NASA(米航空宇宙局)の火星研究チーム“マーズ・サイエンス・ラボラトリー”は、1年以上前に火星に無人探査車「キュリオシティ(Curiosity)」を送り、その表面を走らせている。そこから送られてきたデータを元に、NASAは大昔の火星に湖が存在したという見解を『journal Science』誌に発表した。
上の画像は、nasa.govが発表したその記事のスクリーンショットである。ここは、科学者らがかねてから“水が存在したのでは”と狙いを定めて探査車を着陸させた、「ゲール・クレーター(Gale Crater)」という直径が154kmもあるクレーター内の「イエローナイフ・ベイ(Yellowknife Bay)」の名で呼ばれるポイント。深さ5メートルほど窪んでおり、見かけも地球の湖や沼が干上がった状態と極めて似ている。
「キュリオシティ」は地質学的研究のために、火星の表面や岩の掘削および成分を分析する装置を備えており、今回そのサンプルデータから一帯の岩には炭素、水素、酸素、窒素、硫黄ほか様々な物質が、そして土からは地球の湖に堆積する粘土鉱物スメクタイトが含まれていることが分かった。こうした状況からNASAの科学者らは、36億年ほど前の火星に最大幅が50kmほどの湖が存在し、少なくとも数千万年の間、微生物が育つ環境は完全に整っていたと考えられるとしている。
またカリフォルニア工科大学のジョン・グロジンガー博士はこれに、「イエローナイフ・ベイは、隣接する雪山からの雪解け水が流れこんでできた非常に冷たい湖であった可能性が高い」との見解を添えた。ただし証拠となるものはまだ見つかっていないため、「キュリオシティ」から送られるさらなる情報を待ちたいとしている。ちなみにこの「キュリオシティ」は小型自動車程度の大きさで、NASAは開発と製造に2500億円超を費やした。水が存在したことを想像させる渓谷のような地形を確認するなど、この探査車は地球人の無限大の夢を背負い実に大きな仕事を続けている。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)