ペンシルベニア州のある町長は今、有権者らを相手に頭を下げて回っている。真剣な面持ちで語る言葉は、意外にも「お願いです。どうか今度の選挙では私に投票しないでください」というものであった。
ペンシルベニア州においては、フィラデルフィアやピッツバーグといった大きな都市のほぼ中間地点に位置する小さな町ポートマチルダ。その町長である70歳のボブ・ワイザー氏が今、有権者に対して必死にこう訴えかけているため話題になっている。
「どうか私に一票を投じないで下さい。よろしくお願いします!」
実はワイザー氏、しばらく前に町長2期目を目指すとの意向を示し、当然のように立候補届出を行っていた。ところが最近になって、今回の任期満了をもってこの仕事からは退きたいと心が変わってしまったという。しかし届け出およびその撤回の受け付けは8月まで。もう後に引けないことを知り、がっくりと肩を落としているのだ。
ではあの候補者に投票しよう、という人物がいてくれればこの町もまだ救われる。ところが人気のワイザー氏が2期目を目指して立候補したためか、対立候補は出現していない。困り果てたワイザー氏はこのほど、地元メディアの「Centre Daily Times」にあまりにも正直な声明を発表した。
“有権者の皆さん、次の町長選びにあたっては私などよりもっと適任者がいるはずです。どうかその方に投票して下さい。オフィスで過ごす時間は何より楽しいものでした。でも町議会の人々と丁丁発止を繰り返す日々に嫌気がさすようになり、今の私はすでにこの仕事への興味、意欲を失っています。”
これでは有権者も投票する気をなくすが、町長選挙は形ばかりであっても予定通り11月5日に行われるとのこと。対立候補もいないためワイザー氏の当選は確実であり、彼はその後に辞職を申し出る可能性が高い。この異例の事態に、早くも選挙管理委員会は暫定的な職務代理者選出の検討を始めたもようだ。
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)