南アフリカの民族のひとつ、ズマ大統領の出身でもあるズールー族の神話に出てくる悪霊で「トコロシェ(Tokoloshe)」というものがある。その悪霊を追い払うためにトコロシェの嫌いな塩を使ったと言われているのだが、なぜか今、その「トコロシェの塩」が飛ぶように売れているという。
トコロシェの神話というのは数百年前に遡る。南アフリカのとある田舎の小さな村に、非常にやんちゃな少年が村の伝統的部族の長といつも諍いを起こしていた。この問題児の行動を止めるため、部族の長は少年を海辺に連れ出し少年が嫌う塩を投げつけた。すると少年は醜い生き物に変身、さらに怒り暴れる少年に手を焼いた村の人は少年を殺害してしまったという。この少年が変身した生き物を「トコロシェ」と呼んでいる。いわゆる悪霊のたぐいである。
その部族の長が用いたと言われている「トコロシェの塩」が1950年代に作られ、伝統的ヒーラー(治療師)が悪霊を退散するために使い、さらには塩を使う人の悪運を追い払うということで一般の人も利用するようになった。
この塩が「心の中に芽生えている悪を取り去る」という『スペシャル・トコロシェ・ソルト』としてここ最近、非常に売れてきているそうだ。観光スポットのクルーガー国立公園に近いヘイジービューという町のスーパーでも、トコロシェの塩が200グラム5.99ランド(約65円)で売られており、飛ぶように売れている。この塩を家に撒くもよし、体にかけるもよし、料理に入れてもよいそうだ。
トコロシェ塩の製造に関わっている男性は、「伝統的な信仰が強い地域だからなのか、売れ行きは信じられないほど伸びている」とうれしい悲鳴をあげている。『スペシャル・トコロシェ・ソルト』にはピンク、赤、青と色付きで販売されているが、これは「それぞれの民族には好みがあって、たとえばズールー族では王族を意味する赤が好まれる」とのこと。人々は自分の信じる色の塩を使うことで、悪霊を払う効果がより高くなると思っているという。
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)