南アフリカのクワズール・ナタール州ダーバンにある広場に、救急車を含む緊急車両が大量に放置されていることが明らかになった。その数386台。緊急車両が足りないといわれる同州で、なぜこのような事態が起こっているのだろうか。
放置された緊急車両は等間隔でぴっちりと整列、しかもどれも新車であった。1台33万9000~44万5000ランド(約340万~450万円)はするもので、すべて国民が納めた税金で購入されたものである。車両はメルセデス・ベンツのスプリンターが116台、フォルクスワーゲン・クラフターが117台、トヨタ・ランドクルーザーが113台、フォルクスワーゲン・T5が38台、トヨタ・ハイラックスが2台の計386台。
州の保健省によると、これら386台の車両を1億8000万ランド(約18億3000万円)で購入したが、緊急車両用に装備するためにダーバンのウェントワース病院の近くにある広場に“待機”させてあるという。車両は外側に救急車の赤と白や、警察車両の青と白のラインがはいっているのだが、今後は内部の装備や通話システムなどの搭載が必要とのことだ。
2005年5月、当時の保健省が新しい救急車や緊急支援車両などを緊急医療救助サービス(EMRS)のために購入したことを発表していた。2010年にはクワズール・ナタール州に納車され、2011年に医療輸送用として改造が始められたはずであった。ある新聞社がサッカー場の半分ほどもあるフェンスで囲まれた格納場所を訪れたが、そこには大量の車両が整列して停められていた。
州保健省の関係者によると、車両は政府に商標登録されたのだが、生命維持装置や車両追跡装置などを装備されていない状態で放置されている。この状況に救命救急隊員は「救急車が呼ばれても出動できないぐらい(車両が)不足している」ともらしている。現在使用されている救急車も、装備がすべて整っているわけはないそうだ。
現在、放置されている緊急車両は錆びつき、エンジン内部には雑草が生えている状態だ。保健省は「通話システムをインストールするために置いてある」とコメントしている。
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)