今年の4月に強盗に殺害された男性(68)は天涯孤独だった。妻や子どもとは縁のなかった男性が遺産の相続に選んだのは児童養護施設だった。しかもその額およそ3億3千万円。男性の最後に遺したものが、子どもへの思いやりだったのだろう。
2012年4月3日朝7時、南アフリカのノースウェスト州で、ファンダメルベ氏の友人が、ファンダメルベ氏の農場で働いている労働者を車で送って来た。いつもならこの時間は外にいるファンダメルベ氏がいないので家の中に入っていくと、ファンダメルベ氏は足と手をロープで縛られて床に横たわっていた。片方の目は殴られて腫れており、頭部も腫れていた。「水が欲しい」と言うので友人はロープを解いて水をあげた。ファンダメルベ氏は苦しそうに水を飲み、「誰に殴られたのかはわからない」と言った。友人が外に出て家の周りに不審なものがないか確認していると、ファンダメルベ氏から助けを求める電話が携帯電話にかかってきた。走って戻るとファンダメルベ氏は意識を失くしており、救急車が到着する前に死亡した。
どうやら強盗は4月3日の早朝未明に電気の流れているフェンスの下の土を掘って侵入し、リビングの窓を割って家に入ったらしい。ファンダメルベ氏を殴り、金目のものを盗むと、ファンダメルベ氏の車に乗って逃走した。警察は強盗殺人として捜査を続けているが、盗まれた車は見つからず、逮捕された者もいない。
一方、ファンダメルベ氏の死後、9つの農場、車、投資、農場の収穫物等が残された。農場などを売り払ったところ、遺産はなんと約3500万ランド(約3億3千万円)だった。ファンダメルベ氏には妻も子どももいない。ファンダメルベ氏は双子の妹がいたが出生の際に死亡し、姉も若い頃に交通事故で死亡している。
遺産の行方を決めたのは、ファンダメルベ氏の遺言だった。7月31日の報道によると、そこには「Potchefstroomという村にある児童養護施設に全額寄付する」と書いてあったそうだ。児童養護施設の代表者は「信じられなかった。毎晩彼の遺書を眺めている。非常に素晴らしい出来事だ。」と感謝の気持ちを述べている。
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)