ロンドンと時差がほとんどない南アフリカでは、常にオリンピックをライブで見ることができる。アフリカ大陸がまだひとつもメダルを取っておらずなんとなく沈みがちだったが、7月29日、待望の金メダルプラス世界記録という快挙を南アフリカ選手が成し遂げた。南アフリカでは新聞、テレビ、ラジオにいたるまでこの話題でもちきりだ。
キャメロン・ファン・デル・バーグ選手(Cameron van der Burgh、24)は今年の5月25日、実家に泥棒が入りメダルやトロフィーをごっそり盗まれてしまった。オリンピック前のこの事件に、「(成績に)影響が出るかも」と落ち込んでいたが、なんと男子100メートル平泳ぎで堂々の金メダル。しかも58.46秒の世界記録を叩き出すという快挙を成し遂げた。ちなみに日本の北島康介選手は5位だった。
7月28日の予選でも1位で通過したキャメロン選手。29日夜に行われた決勝では、スタートからゴールまで彼の独擅場だった。キャメロンは優勝後のインタビューで、「この試合のために全力を尽くして練習をしてきた。今夜それが報われた。この喜びは何ものにも代えがたい」と語ったあと、昨年4月、アリゾナでのトレーニング中に急逝したよきライバルでもあったアレクサンデル・ダーレオーエン(ノルウェー)を追悼し、「彼の死後も、彼の存在を感じながら練習をしてきた。彼が僕のレースを後押ししてくれた」と述べた。
また、世界記録はそれほど驚かなかったが、「金メダルを勝ち取った瞬間から、『金メダリスト』として生きていくことになる。逃げ出すことはできない」とキャメロンはいう。表彰台で金メダルを授与されたキャメロンの息遣いが荒かったのはその興奮があったからかもしれない。
なお、南アフリカオリンピック委員会からは、金メダルの報奨として40万ランド(約380万円)がキャメロンに贈られる。
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)