今年1月、台北市立動物園の保育研究センターで飼育されているオスのタイワンクロクマ「ジャーナン」が、鍵の壊れた柵を開けてとなりの檻に侵入し、メスのタイワンクロクマ「ドゥドゥ」を攻撃、死亡させていたことが明らかになった。
飼育員は当時、クロクマたちの食欲や活動状況を観察してから、ジャーナンを戸外の広場に放し、ジャーナンの檻の清掃を始めた。しかし、飼育員が檻に入ってまもなく、ジャーナンがほかの檻を開ける音が聞こえたので振り返ると、ジャーナンとドゥドゥが揉みあうような体勢になっていた。すぐに飼育員がホースで水をまいて2頭を引き離そうとしたが、ジャーナンはすでに殺気立っており、効果がなかった。
異常を察したほかの動物園スタッフも駆けつけ、棒やスプレーで引き離そうとしたが、ジャーナンのドゥドゥへの攻撃は止まらず、最終的に獣医が麻酔を使ってようやく2頭を引き離した。しかし、ドゥドゥは激しく負傷しており死亡したということだ。
その後、動物園では全面的に檻の検査が行われ、ドゥドゥの檻の鍵が壊れていたことがわかった。動物園側は、ジャーナンはヒトが柵を開け閉めするのを真似て、ドゥドゥの檻に侵入したのではないかとみている。
現場を目撃した動物園スタッフや清掃を担当したスタッフは、当時の現場の様子についてこう語る。「まるで惨殺事件現場のように血が飛び散っており、ジャーナンの胸元が真っ赤に染まっていた」、「あの光景を思い出したくないが、血の臭いが鼻から離れない」。
動物園内にある保育センターは、一般客には公開されておらず、飼育されているのは密輸されたり捨てられた動物である。ジャーナンとドゥドゥは何年も前に違法飼育で検挙され、動物園に送られてきた。ジャーナンは小さなころから気性が荒く懐きにくいので、独立した保育区で飼育されていたそうだ。動物園はかつてドゥドゥと夫婦にしてはどうかと考えたが、ジャーナンがほかのクロクマを攻撃することがわかり、あきらめたという。
識者によれば、クマ科の動物は食料不足や交配などの理由で攻撃をしかけることがあるが、国外の一部の野生のクマたちは生きるために集団で狩りをすることもあるそうだ。この識者は、「動物園で飼育されているクマがケンカで死亡するというのは、初めて聞くケースだ」と話している。
なお、事件発生後、ジャーナンは隔離されているということだ。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)