南アフリカにはイスラム教徒が少なくない。そのため肉には『ハラル(Halal)』のマークがついており、ハラル肉を使用しているレストランにはハラルマークのステッカーが貼られている。しかし、それを根底から覆す出来事が起こった。
11月10日、ケープタウンの裁判所にハラル権威者らと南ア肉業者らが集まった。有名な精肉業者がハラル肉に関して詐欺を働いたという。しかも、イスラム教では禁忌の豚の肉を使用したというのだ。
イスラム教団体、肉販売加工業者などは、今週初め、ケープタウンのミューゼンバーグにある肉販売加工会社『オリオン・コールド・ストレージ(以下オリオン)』の工場を調べるよう裁判所へ要請した。11月8日、この要請が容認され、翌水曜日に調査が開始された。このオリオンという会社は中央そして南部アフリカの肉業者などに幅広く肉を提供している大会社だが、今回の事件は南アフリカの農業製造標準法に抵触するだけでなく、市場を揺るがし、さらにはイスラム教徒への冒涜にもかかわってくる。
オリオンは、以下の詐欺を働いたといわれている。
・水牛の肉をインドから輸入し、牛肉として販売した。
・豚の心臓をベルギーやアイルランドから輸入し、羊や牛の心臓とし、ハラルマークを貼った。
・鶏をイギリス経由でスペインから輸入、商品にハラルマークを貼った。
・オーストラリアからカンガルー肉を輸入、牛肉として販売した。
・スーパーマーケットから期限切れで返品された七面鳥の表示を変更して売った。
などなど、詐欺行為も甚だしい。
そのほかにも動物のエサを、ジョンソン・アンド・ジョンソンなどの下請け化学工場へ売っていたことも発覚した。これらのエサに使用している肉もハラル肉ではなく、さらに人間が摂取する品質ではない。
裁判所では、オリオンの扱うハラルの表示は偽物であることを指摘、実際にオリオンの扱う『牛の心臓』を検査した結果、豚の心臓であったこともわかっている。検察側は犯罪として捜査を開始した。また、期限切れの肉のシールをアセトンで洗って消し、新たなステッカーを貼っている映像を携帯の動画で撮っていた従業員もいる。
裁判所は11月10日、暫定的にオリオンの操業を中止させるよう命令した。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)