米西部のコロラド州で5年前にいなくなった三毛猫が、2600km以上離れた東海岸のニューヨーク、マンハッタンのストリートを歩いているところを、無事発見された。猫は背骨に埋め込まれたマイクロチップから飼い主一家が分かり、まもなく再会出来る見通しだ。飼い主は半ばあきらめていた愛猫発見の嬉しいニュースに、とても驚いているという。
ロッキー山脈のそびえたつ自然あふれるコロラド州から、飛行機に乗りでもしない限り移動出来ない大都会マンハッタンまで、どうやって迷い猫が旅をし生き延びたのか…。実に奇跡的なニュースを、『AP通信』が伝えた。
この猫は、ウィロウ(Willow)という6歳のメス猫。お腹と手足の先が白い他は、黒とベージュのミックスカラーで、ぽっちゃりした顔が愛嬌のある三毛猫だ。ウィロウがいなくなったのは06年末か、07年の初めごろ。当時コロラド州ブルームフィールドに住んでいたジェイミー・スクワイヤーズさん一家が、自宅の改装工事をしていた際、工事業者が開け放したままにしていたドアから逃げ出してしまったそうだ。
ウィロウの失踪当時は、「迷い猫のポスターを作ったり、Craigslist(クレイグズリスト=求人情報などを投稿できる米エリア別掲示板サイト)に載せてみたり、いろいろな手を尽くしましたがだめで、コヨーテに食べられてしまったんじゃないかと思っていたんです。」とジェイミーさん。
5年の歳月が流れ、ウィロウのことは半ば忘れかけていたジェイミーさん夫妻の電話が鳴ったのは14日のこと。それはニューヨーク市の動物保護&シェルター局からの連絡だった。ウィロウがマンハッタンのEast 20th Streetを歩いているところを男性に発見され、シェルターに保護されたというのだ。猫の体内に埋め込まれていた個体識別用のマイクロチップによって、すぐに飼い主がジェイミーさん一家であることが特定された。
ジェイミーさんと夫のクリスさんは、知らせを受けて「ショックを受け、非常に驚いた。」といい、クリスさんは「本当にウィロウかどうか分からないから、まだ子供達には知らせるな。」と妻のジェイミーさんに伝えたほどだという。その後、Eメールで送られて来た写真を見て、5年前に失踪した愛猫であることが確認された。
NY動物保護&シェルター局によると、ウィロウは5年の歳月の間に体重が約700g増え、約3.2kgに増加。マンハッタンで厳しいストリート暮らしを送って来たようには見えないほど健康的な上、荒れた様子も見せず行儀良くしているといい、誰かに飼われていたのではないかと推測されている。
しかし、飼い主は「人種のるつぼ」NYのストリートで発見された愛猫が、どんな風に変わってしまったのか、少し心配している。「これまでウィロウがどんな暮らしを送って来たのか分からないから、再会した時にどんな性格になっているかも分からないわ。」とジェイミーさん。失踪当時のウィロウは「とてもクールで、優しい猫だった。」とのこと。当時の人格ならぬ、「猫格」が5年のサバイバル生活を経てどう変わったかは、もうすぐ分かることだろう。
NY動物保護&シェルター局では、現在コロラド州ボールダーに住むジェイミーさん一家の元へウィロウが帰れるように健康状態をチェックし、航空チケットを手配しているところだといい、一家がウィロウと再会出来るのはもうすぐ。ジェイミーさんには17歳を筆頭に3人の子供達がいるが、3人目の3歳の娘さんはウィロウに会うのが初めてとなり、3人とも再会を楽しみにしているそうだ。
ウィロウを待っているのは子供達だけではない。ウィロウは、一家の飼い犬であるラブラドール犬の「ロスコウ」とイングリッシュ・マスチフ犬の「ゾーイ」といつも一緒に並んで、ご飯が出るのを待っていたといい、ジェイミーさんによると「彼女は自分が犬だと思っていた。」とのことだ。
NYから、ボールダーの最寄り空港であるコロラド州デンバーまでの飛行時間は約4時間半。コロラド州ブルームフィールドからNY、マンハッタンまでは2600km以上の距離があるが、どうやって一匹の猫がこの間を旅したのかは未だに不明。もしウィロウがしゃべれたら、その「武勇伝」が聞けるのかもしれないが、謎が解ける日はいつか来るのだろうか?
一方でNY動物保護&シェルター局では、「マイクロチップを埋め込んでいたからこそ、ウィロウに奇跡が起きた。」としており、ペットに何らかの個体識別IDを装着することの重要性を、飼い主達に改めて呼びかけている。
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)