最近中国でなんとも痛ましい出来事が多発している。街中で転んだり倒れたりした老人が、周囲の人に見て見ぬふりをされ、そのまま亡くなるという無情な事件が相次いでいるのだ。もともと老人に手を差し出すという善意の行動がなかったわけではない。しかし、このところ中国人社会では「助けが必要な老人」への警戒心が生まれているという。いったいなぜ?原因は、老人とそして手を差し伸べたいと思う人々の間にできた心の隙間にあるようだ。
江蘇テレビが報じたところでは、今月10日、中国浙江省で道路を小走りに渡ろうとしていた老人が、猛スピードで走ってきたバイクに跳ね飛ばされた。運転手は老人が気を失っているのを見ると、無情にも逃げ去った。その後、多くの人や車が事故現場を通りかかったが、道路の真ん中で横たわる老人を見ても、誰一人として手を差し出す者はいなかった。
また、今月2日には湖北省武漢市で、自宅付近の市場前で転んだ老人が通行人に”無視”され続けた結果、鼻血が気管に詰まり窒息死した。亡くなった老人の家族は「もし誰かが手を貸してくれていたら死なずに済んだかもしれない」と嘆いた。
なぜこのような痛ましい出来事があとを絶たないのか、それにはある事情がある。実は、最近中国の南京や天津で、転んだり、ぶつかられて倒れた老人が、善意から手を差し伸べた一般の人をなぜか事件の元凶として訴えるケースが多発しているのだ。そのため、中国の民衆の中には「助けが必要な老人」への警戒心が生まれてしまっているという。
面倒に巻き込まれたくないという気持ちから「見て見ぬフリ」をするのだろうが、倒れている人に手を差し伸べないとは、なんとも心寒き社会である。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)