東京電力福島第1原子力発電所事故による放射性物質流出や海への汚染水放出などで、海産物への影響が心配される中、台湾の地方では魚をなるべく食べないという考え方が広がっている。しかしそれは、放射性物質を恐れてのことではなく、津波で亡くなった方への敬意からだという。今回の震災に際し、台湾は諸外国のなかでも群を抜くほど巨額の義援金を日本に送っている。かねてより親日家が非常に多いといわれる台湾。報じられることは比較的少ないが、台湾の人々は具体的な行動、そして思いで日本を強く支えてくれているのだ。
中央気象局予報センターの鄭明典主任は、自身の「Facebook」の中で「なるべく魚を食べない」という考え方を示したところ、コメントが殺到した。それは魚を食べない理由が「人は神聖だ。だから、たくさんの人が海で亡くなったいま、それを冒してはならない」という道徳的なものだという。
コメントには「自分のおばあちゃんも同じことを言っていた」「最近、何の魚を買えばいいのかわからない」という意見が寄せられた。また、このような考え方は昨年10月、台風の影響による土石流で中国からの旅行客19名が観光バスごと海に流された事故の際にも、地元の間でうわさが広まっていたというコメントもあった。
鄭明典主任は、地方の人たちのこうした考え方は、人を神聖で冒してはならないという考えからくるものだとし、こうした言い伝えの背景にある意義は考えるに値すると強調した。漁業に関わる人たちの生計への影響も心配しすぎる必要はないという。
前述のとおり、台湾からの義援金はすでに日本円にして140億円を突破している。さまざまな支援団体があるため一概に合計金額を算出することは難しいが、おそらく中国や韓国と比べてもこの金額は突出している。1972年以降、日本と台湾の間に外交関係は存在しない。しかし、台湾の人々が自国のことのように日本のいまを憂いてくれていることに間違いはない。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)